第5話 情報集約 その2
さらにグループのメッセージの確認を進めた翔は、また新たな情報を目にした。
それは【
『現場付近から逃げた人を見たと言う目撃者がいるらしい。
ただ目撃者は異形らしく、そこに居たこと自体が問題に。
だから警察には言えないらしい』
翔はメッセージからすると伝え聞いたものだろうと思った。
ただ他の情報もあるかもしれないと思い、【
『情報ありがとうございます。
これってどこからの話ですか?』
待っていたのか他のことをしていたのはわからないが、【
『友達に鬼界島へ出入りしている奴がいて、そいつが小耳に挟んだらしいよ』
翔はちょっと表情を曇らせた。
「鬼界島の話か……」
曇らせた表情とは裏腹に、メッセージは冷静そのものを装い書き込んだ。
『鬼界島の中で聞いた話なんですね』
鬼界島----
国が異形たちを管理するために作った特区の通称だ。
正式名称は「異形管理特別区域」と言う。
国の機関が管理運営を行い、行き来を制限している。
異形たちの多くはその島から出ることは許されていない。
人も決められた人のみしか立ち入ることは出来ない周りを塀で囲まれた島。
暮らすには何の不自由もなく生活出来るエリアではあるが、そこに閉じ込められていると感じる異形たちも多く、時折抜け出す人たちも多い。
翔はさらに頭の中で考えを巡らせる。
「そこから抜け出していた人が目撃者であれば、言いづらいのもわかる」
そこでさらに内容を聞くべく、メッセージを書き込んだ。
『逃げた人はどんな人だったって話ですか?』
間髪入れずに、【
『蜘蛛の出で立ちをした異形らしいよ』
翔はさらに驚いた。
異形の恰好のまま鬼界島を出ていたことに。
流石に見つかると良くないこともあり、ほとんどの人は人に擬態する。
それを堂々と異形とわかるままで、外に出ていたのだと言う。
「そのままの姿なんてありえない……
ただ余程慌てていたのかトラブルがあったのかもしれない」
現場の様子から異形の仕業が濃厚というシチュエーション。
しかも蜘蛛の糸で巻かれていた。
そこに蜘蛛の出で立ちをした異形が逃げたとの目撃証言。
翔はあまりにも単純すぎて、嘘っぽく感じてしまっていた。
『なんか如何にも犯人らし過ぎて、この人だと言わんばかりの状況ですね』
そうメッセージを返した。
【
『そうなんだよな。
ただ意外にも、どストレートな事かもしれない』
その後も友達に聞いたという話をしはじめた【
小耳に挟んだレベルではなくかなりの詳細な話だった。
この話を聞く限りでは、目撃したのは本当のことだろうと翔は思った。
『情報ありがとうございました!
また何か情報があったら教えてください』
翔はそう伝えて【
しばらく考え込む翔。
ただただ分かりやす過ぎるというが引っかかった。
蜘蛛の糸が残されている以上、警察も異形、特に蜘蛛の異形には当たりをつけて、話を聞いているはずだ。
本当のことを話せていないというのもあるかもしれないが、未だに警察が犯人に辿りついていないのは、そんな単純なものではないはずだ。
固定観念は最大の敵だとは理解しつつも、腑に落ちない状況に頭を悩ませた。
「本当に鬼界島の人が絡んでいるのか……
そっち方面も聞いてみるか……」
翔は再びチャットを立ち上げ、鬼界島に住む知り合いに連絡を試みるのだった。
S.N.S. ~Sagami Network Society~ 光命 @hikari_mikoto
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