第4話 情報集約 その1

『S.N.S』のグループに投稿した翌日--


早速情報が集まり始めた。

噂話から証拠と謳った画像や動画まで様々な情報が集まってきた。


「ネットでの話も多くて、これはフェイクかどうかをまず見分けないと」


翔はまずそこから頭を悩ますことになった。


「警察が行き詰っているということは、現場を中心とした捜査範囲ではなかなかと手がかりが出てきてないってことだし……」


翔は昨日目を通した葵の情報も確認しつつ、グループの投稿を見直していく。


「噂話やネットで既出の情報は警察も調べているから……

 これとこれ……、これもか。

 この辺りはもう調査済みってことだな」


画面をスクロールさせながら、投稿を一件一件確認していく翔。

その中で1件の投稿が目を引く。


「これはどうなんだろう……

 初めて聞くことだな。

 情報をくれたのは……」


投稿者の名前を確認すると、【ツカサ】だった。

【ツカサ】は交友関係が広いらしく、それもリアルの交友関係がほとんどとのこと。

ネットに流れない情報も良く知っているし、噂レベルだが、裏社会の知り合いもいるらしい。

もしかしたら有力な話かもと思った翔は、【ツカサ】宛にチャットで連絡した。


『ツカサさん、この話って、どこの話ですか?』


しばらくすると、【ツカサ】からの返信がきた。


『朧月、久しぶり。

 人類至上主義連合の幹部が話していたのを聞いたって奴から』


ここでの翔の名前は【朧月】である。

自身がはっきりしない存在であることから、霞や雲などでかすんで見える月に例えてこの名前にしている。


『ツカサさん、お久しぶりです。

 人類至上主義連合の話なんですね……

 それはちょっと厄介な感じになりそうですね』


【人類至上主義連合】とは世界各地で暗躍をしている反異形の組織である。

人類がこの世の頂点であると偏った考えを持つ者たちが集まっている。

異形は管理するのではなく、相容れないものとし、殲滅するという思想を掲げている厄介な組織である。

何かしら事件が起こると「異形は危ない」、「人類の敵だ」、「撲滅せよ」というような過激な発言をしている。

半分異形の翔にとっても好きになれない組織だった。


『そうなんだよな。

 あいつらが絡むとなんでもないことでも大変なことになってくる』


【ツカサ】はちょっと呆れたような文体でメッセージを送ってきた。


『わかります。

 大きく関わってなければいいなと思います』


この組織が関わると厄介極まりない。

出来る限り関わってこないことを望む翔だった。


『でさ、今回の件は是が非でも異形の仕業にしたいらしく、証拠隠滅や証言者の買収をしているらしいと聞いたんだ。

 まぁ、人類至上主義連合が自分たちで本当に仕掛けたのかもしれないけど……』


その後も【ツカサ】は聞いたことを詳細に教えてくれた。


『ありがとうございます、ツカサさん』


翔は【ツカサ】にお礼のメッセージを送った。


『いやいや。朧月の役に立てるなら。

 また他に情報が入ったら教えるよ』


【ツカサ】はそうメッセージを残すと、すっとオフラインになっていた。


「ふぅ……」


翔はため息を漏らすと、頭をゴシゴシと掻きむしった。


「あの組織が動いているとなると、大変なことになりそうだな……

 あそこはなかなか警察も手出しできないところだし」


ただ嘘ということもあり得るので、この話だけでなく、もっと情報を集めないといけないと考えた翔は、さらにグループのメッセージの確認を進めるのだった。

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