第3話 情報収集

「カチカチ」


翔はパソコンを立ち上げ、デスクトップにあるアイコンをクリックする。

『Circle』と書かれたそのソフトウェアは、世間一般でよく使われている連絡を取り合うツールだ。

スマートフォンでもやりとりが出来てすごく便利なツールで、世の中に広く出回っている。

その中にある、とあるグループを翔は開いた。


『S.N.S』


Sagami Network Societyの略で翔が立ち上げたグループである。

グループの目的は特にないのだが、気が合う仲間が集って、気軽に話せればとの思いで立ち上げた。

今では多くの仲間が参加しているコミュニティになっていて、いろいろなことを話したり、相談したりしている。他愛のない会話が続いたりもする。

翔自身はあまりリアルで話すのは好きではないが、ここのグループでは饒舌になる。

それだけ気の許せる仲間ばかりのグループになっていた。

ただこのグループに一つだけルールがあるとするならば……

それは「お互いの素性は詮索しない」だ。

だから、翔もこのグループに参加している仲間たちのことは知らない。

そんな現実のしがらみを持たないことを唯一のルールにしていた。

翔はそんなグループに先ほどの葵の話を投稿して、情報を集めようかと考えていた。


「警察からの依頼とは書けないしなぁ……

 どうアプローチしようか」


独り言をブツブツとつぶやきながら、投稿する文面を考える。


『あのさ、今、世間で話題のあの事件、みんな知っているかな?

 あの蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされたって話のやつ』


まずは探り探りという感じの内容を投稿する。


「ピローン」


1分立たずにさっそく反応があった。

【吉法師】だ。


『知っている、知っている。

 結構話題になっているね』


その投稿に続けて、【シエル】が反応する。


『ついこの間、死者も出たとか。

 怖い怖い』


『あれはさー、絶対異形の仕業だよ』


『それじゃわかりやすすぎないか。

 異形とわかる遺留品を残し過ぎだろう』


続々とグループに反応が出てくる。

その反応の良さに翔は改めてこの事件の世間の関心があることを知る。


『でも犯人は捕まっていないらしいね。

 捜査も難航しているとか。

 そこで、何かみんなが知っている情報とかないかな?』


翔は話の核心部分を投稿する。

するとグループの反応がさらに盛り上がる。


『おっ、この間のように事件解決に乗り出すか?』


『名探偵のお出ましだ』


『この間はかっこよかったな。

 また見れると思うと嬉しいねー』


翔は恐縮しながら、グループの投稿を見ている。

あまりの反応に恥ずかしくなり、


『そんなんじゃないよ……

 前回はたまたまだから。

 今度の事件も気になった程度だから、あまり期待しないでくれよ』


と投稿をする。

それでもグループは盛り上がりノリノリになっていった。


『わかったよ。何か情報仕入れたら教えるよ』


『現場百回w

 おれは現場見に行ってみようかな』


『わたしも周りに聞いてみるー』


『ふん、わしに任せろ。

 わしの闇ルートで、極秘ネタを手に入れてやるぞ』


『ハッキング開始~♪』


冗談のように相手をしてくれるグループのみんなだが、前回の事件の時の情報収集はすごかった。

どこでそんなネタをつかんでくるのか、警察でも調べきれていない内容だったり、情報だったりを持ってきてくれていた。


『ありがとう。

 助かるよ。

 みんな、よろしく!』


翔はそう短く伝えると、『Circle』を閉じ、パソコンをシャットダウンするのだった。


「あとはみんなの情報を待とう」


そして、翔は待っている間、もう一度葵からの情報を整理をしはじめたのだった。

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