第2話 事件難航
先日の事件から数日後……
太陽が天高く上る頃、相神翔はまだベットの上だった。
明け方まで友達とネットゲームに熱中していたこともあり、まだうつらうつらしていた。
外からはまぶしい光も入っては来るが、眠気の方が勝っていた。
ふたたび夢の中へ誘われ心地よくなってきた。
「もう少し寝るか……」
翔はそうつぶやき、さらに布団をかぶろうとしていた。
すると、部屋の外からけたたましい足音と共に、扉が開いた。
「バンっ」
そこには、向かいに住む幼馴染の中村葵が仁王立ちしていた。
「ショウちゃーん、ちょっと話聞いてよー」
ずかずかと翔の部屋に入り込み、布団をはがした。
「なんだよ、葵姉、騒々しい」
「僕はまだ眠たいんだから、寝かせてくれよ」
葵がはがした布団を奪い取り、ふたたび布団をかぶり始める。
「それどころじゃないんだから」
「また相談に乗ってよ」
翔と葵は幼馴染である。
年は葵の方が5つほど上である。
そのためか、小さいころから翔の面倒を見ているお姉さん的存在である。
何かと世話焼きなところもあり、今になっても、きちんと生活しろとか、食事はしたのかとか口うるさく言っている。
葵が刑事となった今でも、その関係は変わっていない。
「またって事件がらみ?」
「僕をド○えもんみたいに便利な人だと思っていない?」
「それに捜査情報は機密情報なんだから、一般人の僕に話持ってこないでよ」
葵はちょっと照れ笑いをする。
多少後ろめたさもあるのだろう。
「ショウちゃん、それはそうだけどさ」
「でも行き詰っちゃって……」
「犠牲者も出たし、これ以上犯人を野放しにしておけないし」
早く解決したい一心なのだろう。
その気持ちが前面に出てくる。
昔から猪突猛進で、後先考えず行動するタイプの葵。
それで痛い目を見ていることも多いはずなのに変わらない。
翔がまだ話を聞くとも言っていないのに、べらべらと捜査情報をしゃべりだした。
事件はここ最近世間をにぎわしている蜘蛛の糸にグルグル巻かれた女性たちのことだった。
今まではグルグル巻きの状態で見つかった人たちも大事には至っていなかったが、数日前起きた同様の事件では、とうとう犠牲者が出たということだった。
被害者たちに今のところ繋がりはないようで、捜査に行き詰ったようだ。
怨恨の線も考えられるし、愉快犯かもしれない。
それとも初犯とは違う模倣犯が出てきているのかもしれない。
様々な可能性もあるため、捜査の範囲は広がっているようだ。
葵もその事件の捜査にずっと参加していてるが、手がかりがつかめないようだ。
「葵姉、まだ僕は受けるとも何とも言ってないよ」
いくらか目が覚めてきた翔が目をこすりながら答える。
「わかるけどさ」
「ショウちゃんだったら、お姉さんの言うこと聞いてくれるかなと」
葵はにこやかに笑いながら、翔に甘えたような声でお願いする。
「確かに前も事件を解決したことはあったけど、あれはたまたまだから」
「そう毎回うまくいくことはないよ」
翔は面倒くさいこともあってか乗り気ではなかった。
今はとにかく眠たいのだ。
「そこをなんとか……お願い!」
「前と同じように、『仲間たち』と情報集めてよ」
葵は今度は顔の前で手を合わせ、拝み倒すようにお願いをする。
「えーっ、もう面倒ごとは嫌だよ」
「前の事件、ちょっと乗り気で解決したらさ、なんか知らないけど、ネット上でも話題になっちゃって」
「話題が収まるまで、何もできなかったんだから」
マスコミまで謎の名探偵現ると躍起になって正体を探していたのだった。
その間、翔はSNSでも話が出来ずに苦労したらしい。
「大丈夫、大丈夫」
「次もなんとかなるから」
葵は翔の苦労も気にせずに軽々と話を進めてくる。
「じゃ、頼んだから。SNSの名探偵さん!」
「わたしも情報掴んだら教えるから」
いろいろ話をして気の済んだ葵は、翔の部屋をさっさと出ていってしまった。
「……ったく、葵姉は……」
「情報をまとめて犯人を見つけ出すのは葵姉だろ」
台風一過のような雰囲気になった翔の部屋。
そこに残された翔がボソッとつぶやいた。
「はいはい、やればいんでしょ」
昔から葵からの頼み事は断りづらい翔は、パソコンを立ち上げ、『仲間たち』に連絡を取り始めるのだった。
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