夢にも現実にも真正面に向かい合う物語
- ★★★ Excellent!!!
主人公の高校生、凛はクラスとも家族ともうまくいかず、自分自身にはなにもないと感じている普通の女子高校生。
唯一の仲のいい友達とのライブの帰り道、交通事故に巻き込まれます。
目が覚めるとそこは夢遊界と呼ばれるなんでも夢の叶う世界でした。
冒頭。夢の世界へ入るまでの流れがとても丁寧で、自分の学生生活を思い出しました。
狭い教室の世界。
未来への焦り。
何もない自分への失望。
足元がおぼつかず、不安定。
青春時代の不安や焦りを等身大の主人公を通して、描かれているところがお見事です。
主人公だけでなく、仲のいい友人、苦手なクラスメート、家族、夢の世界の住人、あこがれの男の子。
皆なにか欠けていたり傷のある人たちばかり。
そういう人たちと向かい合い、話し合い、なにもないと思っていた凛の強さが浮き彫りになっていきます。そして、夢遊界の秘密も……
夢と現実が交錯する物語はもともと好きで何作か読んだり見たことがあるのですが、この主人公はある意味でとても今どきかもしれないと思いました。
夢を持っていない。夢を見られない。そこがコンプレックス。
でも、それは逆に言えば……そこは物語本編でぜひ、感じてもらいたいです。
リアルな人間模様。交錯する心。理想と現実。おすすめの物語です!