契約妃は隠れた魔法使い

　クローディア・レティスティアは魔法使いだ。
　魔法の天才ともいえるほどの技量を身に着けた彼女は、「精霊のいたずら」という傷を持つ令嬢。
　精霊のいたずら――それは、精霊に対価をささげる際に何らかの不備が起きて精霊につけられた傷。
　忌むべきものとされる精霊のいたずらを身に負うクローディアの未来は絶望的。
　結婚など半ば諦め、このまま実家の森でいつまでも狩猟採集の日々を続けられたら。それは、決して大きくない、些細な、そして十分に実現可能な願いであるはずだった。
　そんな希望もむなしく、クローディアはあろうことかルクセント王国王子・アヴァロンの妻になる。
　その手に負った、精霊が刻んだ印のせいで。

　棚ぼたで手に入れた妃の地位は、クローディアの望むものからは程遠かった。

　甘味を対価として…続きを読む