狡猾地獄歌
蒼井 狐
狡猾地獄歌
「……ヤーヤー皆様始まり始まり、不気味な語りの時間が来ました。今日の地獄はナンジャラホイさ、狡猾地獄じゃ狡猾地獄……語りますのはキ狂い女。拍子良く良くうたわせますので、是非是非歩みを御止めになって……あははと笑ってそりゃモウ笑って、腹を捩らせ身悶えしたらば、もしくは震えて身悶えしたらば、女に銭投げ浴びせてくだされ……。キ狂い女の語りじゃ語りじゃ……」
「……今日もつまらぬ言葉の羅列、醜い姿もさらけは出せぬ。世の中大層生きづらくって、化けの皮をも剥がされて。厭世に身一つ渡世を探し、何をするにも非難の嵐、これじゃスカアトも履けやしないワ。尊敬丁寧謙譲語、年代性別気にするなかれ。ヨッテラッシャイミテラッシャイ……。乱れに乱れた言葉のお歌も、違う違うと否定をされるは、お門違いも甚だしいワ。響き良ければそれで良し、唾棄はしないで下さいマシ……。皆皆様方お口を揃えて、キ狂い女と嫌悪をされます、
「……アラアラ皆様……お帰りなさんナ、お帰りなさんナ……」
「……カラカラコロロン……カラコロロン……秤にかけると大人は不純です、それもそのはず私の父母、
「……あははあははのほらソレあはは……皆皆笑えやそらそら笑え。身の毛もヨダツよ狡猾地獄、人の怖さは底まで知れぬよ、恐ろしマボロシお見知り置きを……」
「……カラカラコロロン……カラコロロン……人を信用できなくなります、寝付けぬ地獄のお次に来たのは、俗世が怖くてタマラン地獄ヨ、どこまで行こうか地獄の街道、地獄に隘路は見つかりませぬ、進めば止まれぬ一本道には、時折菓子折り落ちてはいますが、止まれば地獄が長引くだけだワ、
「……あははの笑いが止まらぬようで、これじゃあっしもお手上げ地獄よ。過ち恥し心が姦し……少しこれにはチクりとやられた……これから先には狡猾地獄……おっとこれまで……あっしが言っちゃあ話の腰折り……」
「……カラカラコロロン……カラコロロン……過ち恥し心が姦し、お持ちの地獄を指折り数えて、両の指にて収まるならば……狡猾地獄は御一つ如何か……? 狡猾地獄を御存じなければ、御覧に入れます覚悟をなさって……。皆皆存じております通りに、世には優しさ須要であります、優しいお方の魅力に誘われ……然りとて半端な優しさのみでは、魅力にならずでそこいら止まり……。皆皆存じております通りに、世には狡さも須要であります、前者か後者か比べてみたらば……一目瞭然……後者が世の中握っております……。弱者も行い正しくすれば、個と個が集まり、お上を落として厭世を変えます……。私の語りに合いの手挟むは私の弟……狡猾地獄は彼の持ち物、私を使って鬱憤晴らして、私の人生狂いに狂わせ、キ狂い女と称して語らせ、お金も巻き上げ狡猾地獄……狡猾野郎で狡猾狂の、狡猾病なら狡猾症です……どうか助けて下さいマシ……」
「……地獄の沙汰も金次第……ヘヘッ……そんなところでございやす……」
狡猾地獄歌 蒼井 狐 @uyu_1110
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