第6話
――放課後になった。けれど俺は焦っていた。
釧路と放課後デートをする約束をしているのに、こんな日に限って先生に荷物運びを頼まれたのだ。
(先生、いくら俺が地味で真面目な生徒に見えるからって、放課後に何も予定がないわけじゃないんですからね? まあ、その予定がある今日が珍しいのだけど)
そんな事をふと思いつつ、急いでるオーラを出していると、先生に話しかけられた。
「なんだ、明念。やけにそわそわしてるけど。もしかして放課後デートの約束でもしてるのか?」
「え……」
図星過ぎて言葉にならなかった。
「なんだ。図星か。季節はすっかり冬だというのに。お前にも春が来たんだなー。そのデートの相手、もしかして釧路だったりして。――なんてな。それはないか、ははは」
「え……なんでそれを?」
何も言っていないのに、まさかの名前が先生の口から出た事に驚いて、つい肯定してしまった。
「嘘だろ? いや、校門で誰かを待ってる寒そうな釧路の姿がここから見えるから。なんとなく言ってみただけなんだけど……それは悪かった。早く行って温めてやれ」
先生、その発言はややモラハラですよと思いつつ、窓の外を見てみれば。確かにそこには校門で誰かを待っている釧路の姿があった。
(……こんなことならもっと温かい場所で待ち合わせすればよかった!)
そう後悔しつつ、俺は先生に挨拶をして、釧路のいる校門まで走って行った。
◇
「ごめん! 釧路! 先生に捕まっちゃって……思いのほか遅くなってしまった」
謝りつつ釧路の元に駆け寄ると、釧路は寒そうに身をかがめながら目を潤ませていた。
「明念のバカ!! もう、帰っちゃったのかと思ったんだからね!! ラインも既読つかないし……なんのために教えたと思ってるのよ!!」
「ごめんって。お詫びと昼飯のお礼も兼ねて、何か温かい夜ご飯おごるから……許して」
そう言うと、釧路はわざとらしくぷいっとそっぽを向いた。
「うち、そんな安っぽい女じゃないから。……でも、手つないでくれたら許す。明念、温かそうだし」
そう言って、伺うようにこちらに目だけを向けて、手を差し出してきた。
(何、こいつ……もしかして、いや、うすうす思ってたけど、ツンデレなの?)
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