第3話
結局、丁寧に言い直して来た釧路と、放課後デートする約束をした。
釧路はまた嬉しそうににやにやとして来たけど、正直、なんであんなに嬉しそうなのかが分からない。
釧路は可愛いし、モテるのは間違いない。……それに、明らかにギャルだし。地味な俺よりもっと派手でイケメンな男との方が似合いそうなものなのに。
けど……そう言えば釧路って、浮ついた噂聞いたことないなーと思った。
――そんな事を考えている今は、体育の授業中。
男子はバスケで女子はバレー。
釧路は髪をポニーテールにして、真剣な表情でボールと向き合っていた。
正直……髪を上げている釧路も、真剣な顔をしている釧路も、可愛いと思う。あんな子が俺の彼女? マジかよ。
「寧々、行くよ!!」
「まかせてっ!」
釧路と仲のいいギャルがトスを上げたボールを、釧路が見事なまでに相手コートに打ち込んだ。
……あんまり意識した事なかったけど、釧路って運動は出来るんだなーと思った。
対して運動も出来ない俺。だからボールが回って来ることもない。
そう思っていたのに。
「おい、明念!! ボール行ったぞ!!」
「は?」
俺にパスしようとしたのか、それとも誰かへのパスをミスったのか。俺に向かって勢いよく飛んできたバスケットボールは、見事に俺の後頭部へとぶつかった――。
◇
パチッ。
目を覚ますと、俺は保健室のベットにいた。いや、正確には頭をぶつけた事を心配するクラスメイト達に、念のため保健室に行った方がいいと言われて来たものの、誰もいないからとりあえず寝てみただけなのだが。うっかり眠り過ぎてしまった。
そんな俺のそばには、俺を心配する可愛い彼女の釧路が……いるはずもなく。保健室の先生すらいなかった。
ぼっちかよ、俺。ぼっちじゃん。
やや寂しさを感じつつ時計を見てみれば、昼休みがもう15分ほど過ぎた頃だった。
(やばい!! 早く行かないと、購買の弁当売り切れてしまう……!!)
慌てて保健室から飛び出した。すると誰かに呼び止められた。
「明念君!」
可愛い女の子の声だった。けれど、俺は呼び止められている場合じゃない。早く行かないと、昼飯を食べ損ねてしまう。――と、思いつつ振り返ってみれば、そこにいたのは体操服姿のまま大きな紙袋を抱えた釧路だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます