第2話

 ……どうしよう。俺は、どうするべきなんだろう。


 正直、彼女は欲しい。そして、釧路は可愛い。そしてそして、今年こそ、勉強もスポーツも恋愛もできない地味な自分から、脱却したいと思っていた。


 だから本当に釧路が俺と付き合ってくれるなら、こんな出来過ぎた話はない。


 けど。


「……これって、ウソ告? それとも罰ゲーム? だって、本気の告白なら、“付き合いなさいよ” なんて言い方、しないよなあ?」


 なんとなく、言い方が気になってそんな事を言ってしまった。


 ウソ告でも罰ゲームでも、なんでもいいからいいよって返事すればよかったかもしれない。だって、天地がひっくり返ったって俺に彼女が出来るとは思えない。


 俺は今まで告られたことはおろか、女子と仲良くなったことすらないのだから。


 だから、なんでもいいから付き合った気分を味わってみるのも悪くなかった気がする。ああ、こういうところなのかもしれない。俺に彼女が出来ないのは。


 俺はすっかり断られる気分になっていた。けれど。


「……むかつく。屈辱なんだけど。……明念君、好きです。うちと、付き合ってください。……これで、……いいですか」


 潤んだ上目遣いで、釧路は改めて俺に告白してきた。恥ずかしいのか、顔は真っ赤で身体はぷるぷるしている。


(うそだろ? おい。……こいつ、めっちゃ可愛いんだけど??)


「う。……うん。いい。釧路が俺でいいのなら」


 釧路があまりにも急に素直になったから、俺はどうしたらいいのか分からなくて、そんな返事しか出来なかった。


 けれど釧路は安堵したような顔をして。


「ほんと? ……よかったあ……。言っとくけど、うち、誰かに告白したの初めてなんだからね!!」


 そう言って顔を隠すように机に突っ伏した。


「それは絶対、嘘。いや、そうでもないか。釧路、可愛いもんな」


 向こうを向いて顔が見えなくなった釧路の後頭部に向かって、俺はボソッと呟いた。


 すると釧路の耳がぴくっと動くのが見えた。


「……ほんと? 明念から見ても、可愛い?」


 釧路は向こうを向いたままそう聞いて来たから。


「うん」


 一言だけ返事した。すると、ガバッとこちらに顔を向けて、嬉しそうににやにやし始めた。


「へへー。ねぇ、今日の放課後、デートして


 でも、言い方が気に食わなかった。だから。


「……あげよっかとか言われるなら、いらない」


 そう言うと。


「……明念って、めんどくさいね。……今日の放課後、うちとデートしてくれませんか」


 釧路はめんどくさいと不貞腐れながら、言い直してきた。

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