サイバーパンク世界で最底辺の街、ボトム。そこへと落とされた娼婦のリサはクラッカーのトオルとともに最悪の世界に反撃する――――リサとトオル、ふたりの主人公の人生は読んでいて辛いし、鬱屈した気分になりますが、そのふたりを主人公に据えたことでドラマを立体的にしています。また鬱もこの作品のキーワードです。たしかリリー・フランキーが「鬱は大人の嗜みですよ。それくらいの感性を持ってる人じゃないと、俺は友達になりたくない」と言っていたことを思い出します。真に現代的なサイバーパンク作品と言えるのではないでしょうか。
この物語は短編という制約の中、とても想像力を掻き立てるSF作品でした。それでいて、格差社会が全編において見え隠れする。搾取されるものと、富を貪るもの。どんなにテクノロジーが発展したとしても、その構図は変わらない。脳に補助コンと呼ばれる機械を入れて、精神安定パッチをインストールする等、SFスキーにはたまらない描写も嬉しい。それでいてストーリーはしっかり。続きが気になります。SF好きにはもちろん、短編で読者に印象付けたいと思っている方も是非。おすすめです。
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