「日常」とはこういうもの

 一日の生活のなかから、洗濯物の乾きぐあいを気にするごく短い時間を中心に切り取った掌編。
 裏を表にして干していた洗濯物を「裏返す」のが、「裏返す」なのか「表返す」なのかを気にするところまで、心の動きがこまかく描写されている。
 しかし、その短い時間のなかにも、夫とともに暮らし始めた過去、ベランダから見える電車が行く先と、時間と空間の広がりがある。
 生活のなかの、何気ない「いま」であると同時に、生きてきた時間と空間の途方もない広がりにつながって行く。
 「日常」とはこういうもの、「日常を描く」とはこういうこと。
 それを感じることのできる物語です。