第15話 後日談
ゴォーン…ゴォーン…
今日は十二月三十一日。大晦日だ。
年明けを路上で過ごすのは気持ち的に嫌なのでお風呂で年明けをする事にした。
「…ふぅ。」
風呂に浮いている柚子の香りとちょうど良い温度の湯舟が体と心を癒してくれる。
(ここの宿でよかった…後で赤福でも食べようか…)
目を閉じると、頭の中で今年あった色々な事が煩悩の数だけ瞼の裏に映し出されていく。
なんちゃって工房を作ったり、
子供から魔法をぼったくったり、
孤児院から抜け出して仕事を始めたり、
自分で真っ当なお金を稼いだり、
初めて洋服屋さんに行って買い物したり、
警察の人と仲良くなったり、
初めて海を見たり、
初めて、誰かを助けたり、
初めて、誰かを壊したり…
本当、ロクデモなく、素晴らしい一年だったなぁ…来年はどんな年になるんだろう…?
—————神之門さんはあの後、渡辺って言う女性の協力者になった。
基本的には活動しないが、何かがあった時の手段として神之門さんを公的に生きてる事にしとくんだとか。
これからもあの神社を守りながら、どこかに出掛けたりするらしい。
高橋さんたちの遺体は遺族にしっかりと返された。
勿論、僕も魔法を使って遺体を綺麗にさせて貰った。ぐちゃぐちゃにした張本人だからね。
勿論、遺族に真相を話す訳にはいかず、遭難して氷の中で長い間凍っていたというカバーストーリーが作られた。
だが、神之門さんの家族はもう存在しないらしい。
まぁ、警察からすれば良くも悪くも都合が良いんだとか。
そもそも、どうやら今回の依頼は新しく例外課についたお偉いさんの息子が「例の銀髪のヤバい奴さ、黎明期の事件とか当てて様子見ね?」とかほざいた結果、僕を使って捜査する事になったらしい。
そして、当の神之門さんだが、
——全て正直に話した。嘘はいつかバレる。
彼女の反応はとても複雑な物だった。
自分がもう60代である事もそうだが、何より自分達がすでに死んでいて、いきなり神社に来た無常によって大学生達と神主が殺されたのだ。
感謝するべきなのか憎むべきなのか。
複雑な思いではあったものの、神主はそもそも嫌いで、ピンク髪の女子大生からは嫌われており、他のメンツともあまり喋らないと言う理由から“まぁ………いっか。”“良いの?!”と、なった。
うーん、本当に良かったのか?神之門さん?やった僕が言うのもなんだけど。
あの大学生のメンツは神之門さんを除く4人、高橋グループでつるんでいた。
神之門さんがそのグループの中に入った理由は授業の宿題でそのグループが今劇村に行こうとしていた所、そのグループに混じって今劇村に向かったと聞いた。
自分以外の家族が交通事故で死んだばかりで、自分の家のルーツを知りたかったんだとか。
(…自分が知らない内に40年も経っているとか…だいぶキツイだろうなぁ…)
風呂場にアラーム音が鳴り響く。
「…あ、あけましておめでとうございます。...今年もよろしくお願いします。...」
誰もいない、空虚なあけましておめでとうだった。
お風呂から出て、冷めない内に体を拭く。
(そういや、今劇がなんで彼女達を生きているように演じさせたんだろうか?そして、神之門さんの魂を堕としてまでやりたかった事とは一体…?……まぁ、真相は闇の中、か。)
今劇は死んだ。
真相は、死人しか知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます