第14話 マバラサシサマ
『それで?御神体はどうなったんだ?』
結論から言うと、御神体は今劇から奪う事が出来た。
その当の本人である今劇は死んだが。
僕が対価として払った4人の命を見捨てる行為は今劇から魔法、制御権、そして寿命三日分を奪った。
もちろんそれで死んだわけではないが、どうやら寿命を奪った時の痛みによるショック死らしい。
(はぁ…消化不良だな…)
「――御神体は有効活用として”死んでいる”神之門さんに埋め込みました。」
『…は?』
「とりあえず、御神体に関する情報を送ります。」
赤い宝石に樹液が纏わり付いている写真と情報を送る。
下のやつが例の御神体の内容である。
『マバラサシサマの因子結晶
概要
一定の区切られた範囲内での魔法行使。
対象に演技をさせる権能を保持している。
魔力は地脈と信仰心から吸い取り、力を溜め込む事ができる。』
「これを神之門さんに封印し、そしてマバラサシサマを演じさせる事で自由に生きてもらう…そう言えば、異能力外部協力者ってまだ席余ってたりします?」
『…御神体から神が宿って暴走する可能性は?』
「恐らく大丈夫ですよ?最初っから100%支配されていなかったみたいなんで。土御門さんからの情報によると、神之門さんってここの神社の遠い親戚らしいじゃないですか?そのせいか、現に今劇の野郎も神之門さんの魂を完全に掌握するのに40年もかかっていたみたいですし。」
恐らく、ご先祖様の一人が神之門さんの血に受け継がれているのだろう。
それを、今劇がその特性を利用しようとして、時間をかけて魂を堕とそうとしたのだろう。
『分かった。一旦様子見で、安全だと分かったらウチの後輩の協力者にする。』
「わかりました。」
『あと10分もすればそちらに掃除班が着く。そちらの要件は大体分かった。後は引き継ぐ。』
「はい、報酬もお願いしますね?メリークリスマス。」
『…ああ、メリークリスマス。』
ガラケーをポケットに直す。
今劇の顔を1発ぐらい殴りたいと思いながら振り返ると、そこには幸せそうに眠っている神之門さんがいた。
境内に落ちていた肉片も全て片付け、後は神之門さんが起きるのを待つだけだ。
もし、万が一にマバラサシサマに乗っ取られたとしても『魔法の効果範囲を制限する魔法』と『体内にあるMP分だけMPの許容範囲を底上げする魔法』で神之門の魔力をマバラサシサマの因子結晶+自分の元々の魔力としている。
ちなみに魔法の効果範囲は神之門の体内だけに設定しており、神之門自身が特定のキーワードを発する事で外部にも出力できるように設定した。(『魔法の効果範囲を制限する魔法』と『魔法の出力を余っているリソース分だけ向上させる魔法』で本来の出力の9倍まで跳ね上がっている。)
(うんうん、やっぱり僕って戦闘とかよりもこういった改造や工作の方が得意だし、似合うんだよねぇ〜)
文字通り、丸一日も掛かった作業。その充実感は半端じゃない。
勿論、魔法が持続するように、しっかりと複数の魔法がループするように設定したのだ。
わざわざ図書館でproccesingやC言語などの概念を学んどいてよかった。
そんな事を考えていると隣でモゾモゾ動くのが見えた。
お姫様のお目覚めのようだ。
「…?おはよう…?」
「ん?あ、起きた?」
おはよう、
40年後の世界にようこそ。
____________________
とりあえず、後日談はまた次に…
どうやって埋め込んだりキーワードを設定したのは…また今度わかるかも…?
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