第19話
「いや、失礼。無言じゃなくて言葉は必要なんだね。」
一瞬、祷は動揺したがすぐに頭の中でわかった事があった。
「…なるほど、『鑑定』ですか。すみませんが、私の魔法で貴方の事を”知ろう”としましたが…これではお互い様ですね。」
「うん、そうだよね~。」
改めて、彼女のステータスを見ようと思う。
(『鑑定』)
『祷未来
MP20/35
所持魔法
『魔法の数を数える魔法』『やり始めた作業を終えるまで中断出来なくなる魔法』『10円玉をベイクドモチョチョとしか認識できなくさせる魔法』『自分の背中の真ん中ら辺を痒くさせる魔法』『自分が混乱する魔法』『デコピンの威力がほんの少しの気持ちだけ上がる魔法』『自分が対面している相手から相手の新しい事を1つを知ると、相手の魔法の名前がランダムで一文字だけ分かる魔法』』
恐らく、最後の魔法が彼女にとって一番価値がある魔法なのだろう。
「その魔法、自動発動系なの?」
「ええ。そういう貴方は?」
「僕の鑑定は自分で発動させる奴。」
魔法には自分で発動させる奴と、勝手に発動される奴がある。
どっちなのかは発動させるまで分からないが、大抵は自分で設定する事が出来る。
「本当に将来が安定な魔法をもっていますね。この学校へはそれで?」
「うん。まぁね。」
他にも有能な魔法を持っている事を言ってやる必要はない。いつかはバレるかも知れないが、自分からわざわざバラシても得はないしな。
祷は周りをチラチラ見てこちらに顔を近づけると、質問してきた。
「私の魔法を見て、何か他に気が付いた事はありますか?アイデアとして聞いときたいんです。」
「…なんでもいいんですか?」
「はい。」
そうか、なんでもか…。
(となると、これかな?)
「この、『10円玉をベイクドモチョチョとしか認識できなくさせる魔法』ってさ、10円玉に魔法をかけるんだよね?どれくらい持つの?」
「えっと…はい。10円玉に魔法をかけて5MPで10分程です。」
変な魔法だが、これも立派なアタリの魔法だ。
認識阻害というか、精神汚染というか。
恐らく、認識だから味や匂いもベイクドモチョチョとして感じるんだろう。
そういった魔法だからこそ、価値は高い。
「例えば、嫌いな相手の机にさりげなくこの10円玉を置いといて、沢山食べさせるとか?」
「………参考にさせて貰います。」
彼女の顔が思わず引き攣る。
どうやら、彼女の感性はまともな人間のようだ。
(絶対に引かれたな。)
「ああ、今のじょーだん!!じょーだんだから…」
「それでは、他の所の案内をさせて貰います。」
じょーだんだよ?信じてないでしょ?ねぇ?
…
..
.
「案内は以上です。なにか質問は?」
「いや、ないです。今日はありがとうございました!」
わかった事は、この学校は生徒の自主性が最も尊重されているという事がわかった。
例えば、予約性ではあるが、簡単な工房なら入ったばかりの生徒にも貸してくれるという待遇だ。
まぁ、そもそも魔法と科学を駆使してモノを作る事が出来る人自体が世界的に見ても少ない事もあってか、全然予約表に何も書かれてなかったけど。
「あ、やっぱり一個だけ質問があるんだけど、いいか?」
忘れていた。
そもそもの疑問を忘れる所だった。
「なんで今日、君が案内してくれたんだ?」
「ああ…文字通りの点数稼ぎですよ。これは比喩じゃなく、この学校では生徒は一定の点数にまで至る事によって中学から高校にあがる事が出来ます。中学では点数が低いですが、高校や大学では毎年一定の点数にまで達成しないといけません。」
(なにそれ、めんどくさ。)
「はい、めちゃくちゃめんどくさいです。」
「え、声に出てた?」
「顔にばっちりと書いていますよ?」
どうやら、余りにも衝撃的過ぎて顔に出ていたようだ。学校生活でポーカーフェイスも身につけないとな。
「ちなみに、余った点数は来年に持ち越す事が出来ます。あ、ちなみにこれが点数が書かれた一覧表です。」
祷がポケットから出した紙を受け取り中身を見る。
(えっと~何々?)
上から順番に見ていくと、どうやら中学から高校に上がるのに500点。学年が上がる事に200点と書かれている。
なるほど、テストの点数や毎学期の各教科の課題。出席なども入るらしい。
で、一番大きな点数なのは………
「それはあげます。では、私はこれで。また明日。」
祷が遠くに離れていったのを見計らってポケットから真っ白なスマホを取り出す。
実は、入学祝いとして自分に向けて買ったのだ。
(…色々考えてみたら空しいな…)
点数表をスマホに写真で保存してポケットに直してから、胸ポケットから黒いガラケーを取り出す。
「えっとーどこだっけな…あ、あったあった。」
連絡先から土御門に電話を掛けながら歩いて帰る。まさか、初日からコイツに電話を掛けるとは思わなかったよ、ホント。
数コール後、土御門が電話に出た。
『もしもし。ご入学おめでとうございます無常君。何かありましたか?』
「ありがとうございます。ええ、ちょっと聞きたい事があって。」
『なんですか?』
さて、なんて言おうか?いや、別に怒っているわけじゃない。ただ、気に入らないだけなんだ。
「この学校の成績の付け方の中にある、『論文』や『発明』の項目ですよ。これ、わかってて入れたんじゃないですよね?」
『…長ったらしいことを言う気はないので言わせてもらいますが、我々としては貴方に新たな魔法の可能性を見させて欲しいのです。』
あーあ。やっぱりこんな事だろうと思った。
だってほら。おとなしくして欲しいのならこんな学校に入れるわけないでしょ。
(本当に気に食わねぇなぁおい。)
「今から、他の学校に転校するというのは…?」
『…残念ですが、それは難しいです。』
『その学校では百億単位でのお金が動く事はざらにあります。その中に、貴方を組み込んでみたいという考えがあるのでしょう。』
『で、ちなみに一応上に話はつけられますが。どうしますか?』
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無常仮寝の本当にどう使うべきかわからない魔法
『「あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなたが皆をこんなウラ技で騙し、セーブデータを破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!」と凄くカッコいい声で正々堂々と話す魔法』
消費魔力MP1
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