第18話

連絡が終わってから祷さんに案内してもらおうと思った所、転校生らしいイベントが起こった。


「ねぇねぇ!どこから来たの!」

「俺、佐藤って言うんだ!よろしく!」

「魔法を沢山知ってるって言ってたけど、どんな魔法知ってるの?教えて!」


うーん、これはこれは。

予想はしてたけど、いつ体感しても圧がすごいね。


そうこうしていると、その中の一人、ポケットにチェーンを着けた金髪が寄って来た。


「お前はどんな魔法を持ってここに入学してきた?」


そいつは周りを押しのけて片足を僕の新しい机に乗せてきやがった。他の人も少しだけ僕達から離れていく。


(は?何コイツ俺の机に足乗っけてるんだよ?殴っていいか?なぁ?)


まあ、めんどくさそうだし適当に答えとこうか。

質問に答えようとした所、人混みの中から祷さんが出てきた。


「魔法の事を聞くのは御法度です、魏尻君。」


「…チッ」

魏尻と呼ばれた生徒は祷を一瞥して去っていった。


「とりあえず、皆さん質問は明日にしてくれますか?私は彼を案内する必要があるので。」


彼女がそう言うと、どこか惜しげな目をこちらに向けながら去っていった。


「ありがとうございます。緊張してて。」

「別に。頼まれたので。」


そして、カバンを持って学校内を案内してもらう事になった。

行き先は魔法演習場という場所らしい。


学校内はビルのような形の建物と体育館、そしてグラウンドがある。

なんというか、中途半端にテクノロジーを組み込んだ歪な学校に見える。


「あちらの体育館の地下には第一魔法演習場、このビルの4階には第二魔法演習場があります。グラウンドの端っこには来年に建設予定の第三魔法演習場があります。魔法演習場には、それぞれに科学者や専門家達とそれを補助する様々な機械があります。」


なるほど、結構魔法にはガチで力を入れてるんだな。


「つか豪華だなぁ〜これで学費無料とかマジかよ。」


「学費無料な点は私も同意です。この学校の素晴らしい所です。」

「こんなにも凄い所の学費を考えたら結構な値段になるでしょうね〜」


エレベーターで4階に行くとそこでは機材を持った作業員らしき人達がせっせと、忙しそうに働いていた。


「ここは常に機材のやり取りが行われています。ですので、ここでの行動は気をつけてください。」


「…もしかして、さっきの保険の加入とかってここの物を壊した時の対策ですか?」

「はい、大体そうです。まぁ月々500円で大丈夫になるっていうのなら、私は安いと思います。」

…なるほど。確かにそれならちょっとぐらいなら暴れてもオッケーなんかヤラカシても大丈夫か。


「今日は貴方の為に先生が魔法演習場を予約しています。…案内は以上ですが、何か質問はありますか?」

「…特に無いけど…一緒に魔法の演習しない?」


そう言うと彼女の顔は何言ってんだコイツ?と言わんばかりの顔をしていた。


「自分の魔法を他者に開示する気ですか?」

「…何かダメな事だったりするのか?」


もしかしてアレか?

魔法はプライバシーみたいなモノだったりする?


「貴方、何か変ですね。」

「変?」


彼女は第二魔法演習場と書かれた看板の前で立ち止まる。


「貴方はさっき、クラスの皆さんの前で緊張してたって言いましたよね?」

「…ん、言ったな。」


「本当に、緊張していたんですか?」


彼女は話を続ける。


「貴方はまるで、何回も転校して来たように振る舞っているように見えます。」


彼女の目が、こちらに向く。


「貴方、さっきの魔法の開示の件もそうですけど、本当に普通の転校生ですか?」


…そもそも転校生って普通じゃないと思えないんだけど。


「そう言う君は、魔法を使ってまで人の事を無言で探る事は普通なのかい?」












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