あとがきのあとがき

【あとがきのあとがき】発売によせて。

 みなさま、こんにちは。虹乃ノランです。『そのハミングは7』が本日12月18日、KADOKAWA(角川書店)より発売となりました。


 ハミングの第一話をカクヨムへ投稿したのが2023年12月30日であることを考えると、みなさまに出会ってからまだ一年たらずということになります。受賞のお知らせを5月にいただいたころ、私はちょうど重度の椎間板ヘルニアを患っており、初回の編集者さんとのZOOM打ち合わせは、“布団の上でうつ伏せ” 状態で行いました。


 先日、授賞式で初めて実際に担当さんとお会いした際、「あのときは慌てましたよ!」と笑っておられました。なお椎間板ヘルニアは、その後8月に手術をしまして、現在、ほぼ症状なく暮らしております。ご心配をおかけした皆様には、あらためてお礼を申し上げます。


 皆さんの温かい応援メッセージに助けられて、私は2024年という特別な年を過ごすことができました。かけがえのない出会いもありました。図書館でのイベント、愛媛の書店さんからのサイン本依頼、書籍情報サイトからのインタビュー依頼、講演会への登壇依頼など、現在進行形で、すばらしいご縁をたくさんいただいております。


 何名かのお世話になった方々には直接お手紙にてしたためましたが、2023年の夏の時点では、もう「小説を書くのをやめよう」と考えていました。過去に書き溜めた小説の数々を、いつまでも手元に遺していては踏ん切りがつかないだろうという思いから、2023年から24年にかけて、すべてKDPにして手放して終わろう、と考えました。


 ただその際、最後にふらりと寄り道をしてみることにしました。2020年ごろから闘病していたため、数年のあいだ小説の公募にも一切出していなかったし、ウェブのコンテストにも殆ど出したことがないから、もう一度落選を確認してみてからでもいいな――そんな小さな思い付きで、ぽつぽつと目についた公募に出してみました。


 わらしべ長者のように、というたとえが適切かどうかは分かりませんが、ほんの小さなきっかけの積み重ねで、この一年半を過ごしてきたように思います。


 数ある創作論の中では、書いたものにいつまでも拘らず、新しい物をかけという言葉が繰り返されます。たしかに、書き続けることが最も大切で、最も難しいでしょう。ただ私は、過去作品の行く末を見限ることはできませんでした。子供である作品が持っているポテンシャルを、ただひとり信じる親心のようなものだったかもしれません。そうやって拘り続けた結果、今日を迎えています。ですので、どこでどのような評価を受けても、目指すものがあるのであれば、決してあきらめないでほしいと思います。


 これまで幾人かの信頼する方々に査読などをお願いした際、彼らから返される言葉の中に、「最後は自分を信じて」という共通するものがありました。私もまた、どなたかから意見を求められた際には、「最後は自分を信じて」とお伝えするようにしています。


 正直なところ、読むのも書くのも、小説を純粋な趣味として嗜むことができるのであれば、それが最も精神安定上は良いだろうと今でも感じます。でもそれで収まらないので書くのだろうと。


 私の文字書きの原点は、「手紙」にありました。「日記」にありました。小説を書こうとは思わなかったけれど、いつも誰かに手紙を書いていました。宛先がなければ、日記を書いていました。


『小説をめぐる十二章』河野多恵子さんの著作の中で、「小説家は、精神的種族保存拡大のために書く」という言葉が出てきます。平たく言えば、物書きは、共感者を得ることにこの上ない喜びを感じるというようなことです。


 口下手で、うまく表現できないからこそ、文章を書いてきた。文章でなら自分のいいたいことがいえる。私を含めてそのような方は多いと思います。文章を書いているという一点のみでこのように多くの方々と深いシンパシーを抱ける場や機会の多くが、善意で満たされていることをずっと願います。


 刊行によせて、というには、随分と離れたご挨拶となりましたが、本当に紆余曲折あり、ハミングの刊行を迎えることができました。


 おひとりおひとりへの感謝は、とても語りつくすことができません。


 作品や、私を、見守ってくださったみなさま。また、新しく興味を持ってここへたどり着いてくださったみなさま、本当にありがとうございます。


 自分自身やお読みくださる方のお心を裏切ることなく、誠実に紡いでいけたらいいなと、願っております。今後とも、どうぞよろしくおねがいいたします。



2024年12月18日

虹乃ノラン拝



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◆そのハミングは7 KADOKAWA公式

https://www.kadokawa.co.jp/product/322408000646/


 公式ページからは、KADOKAWAグループである「読書メーター」に登録されたレビューがたどれます。編集部や担当編集者も日々チェックしておりますので、もしお気に召していただけたらぜひ、読書メーターへの登録もご検討いただけましたらうれしいです!


◆文芸・本のニュースサイト「ナニヨモ」にインタビューが掲載されます(2024/12/20予定)


◆名古屋市志段味図書館にて、『そのハミングは7』刊行記念トーク会&サイン会が開催されます。

 日時:2024年12月22日 14:00-16:00

 場所:名古屋市志段味図書館 二階会議室

 https://eventwebreserve.tackport.co.jp/eventUsr_ngy/main/view/5796


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そのハミングは7【書籍化】 虹乃ノラン @nijinonoran

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