暮らしの手引き

 釣内つりうち島に入島されたばかりの皆様は、独自の文化に驚くことも多いでしょう。

 不安を抱えている方は砂噛さがみ医院までお越しください。ご病気でなくても構いません。相談事はいつでもお聞かせください。


 ※長男の勝四郎かつしろうは現在体調不良で自宅療養中のため、医薬品を処方できない場合があります。


 特にもうすぐお盆の季節です。初めての島の行事に心配事を抱えている皆様のために簡単な手引きを記します。


 迎え盆の際には、灰を入れた盆を置き、籠をかぶせください。灰は遺灰が好ましいです。籠は毎朝開けて、足跡がついていないか確認してください。

 もし、魚の尾を引き摺ったような跡がある場合や、海水で湿っている場合は、祖霊が来た合図です。

 家の中に灰の盆を入れてお迎えしてください。


 お盆の間は祖霊が住む海の向こうに想いを馳せながら、海岸を掃除すると良いでしょう。


 砂浜には祖霊を祀るためのサイレーンが設置されています。

 沖の方から低い唸り声のようなものが聞こえたらのく耳を澄ませてください。サイレーンは長引くと歌声のように変化します。


 島民の名前が呼ばれたように聞こえたら、祖霊が応えてくれた合図です。しばらく砂浜に留まり、祈りを捧げるのが良いでしょう。



 万一、誤った手順を踏んでしまった場合、砂噛医院までご相談ください。



 お盆の間はお寺には絶対に近づかないでください。



 砂噛 豊雄とよお

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釣内島暮らしの手引書 木古おうみ @kipplemaker

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