第3話 プライド
執筆歴とプライドは比例する。
書けば書くほど、プライドが高くなっていく。書き始めのフレッシュな気持ちを思い出したい。それなのに、その記憶は年々遠くなっていく。
だからといって年数が渋さを生み出し、ベテランのような風格を生み出しているかと言われれば、そうではない。中途半端な場所にいるようにも思える。
正直なところ、プライドというのは「ほどほど」がちょうどいいと思う。
そうわかっていても、肥大してしまうから苦しい。
なぜプライドは肥大するのか。
それは、焦りがあるからなのだと、私は考えている。
プライドには、ポジティブなものとネガティブなものがある。
ポジティブなプライドの背景には、「作品を褒めてもらった」などの経験を通して、小説を書くことに対して自信をつけてきたことなどがある。これが無ければ、小説を書き続けられないだろうから、一定のプライドは必要ということになる。私が嫌だと思っているのは後者、ネガティブなプライドだ。
ネガティブなプライドには、先程も言った通り、焦りが関係している。
端的に言えば、「焦りの裏返し」だろうか。
執筆歴が長くなるとともに、自分のスタイルが凝り固まってしまう人もいれば、いくら経っても自分のスタイルを確立できない人もいる。とにかく「何かしないと」という焦りが、見てくれをよくするためのプライドを生む。
要するに、中身が空虚なプライドである。
これは、風船のようなもので、鋭い針でつつかれると途端に破裂する。そして、風船は周囲に向かって弾けるのだ。
ネガティブなプライドを、なるべく捨てたい。
その背景には、自分や自分の作品への自信の無さがあるのだと思う。だから、とにかく書く。それを、正当に評価してもらい、トライアンドエラーを重ねる。自分の作風、自分が描きたいこと、自分の得意なジャンル、そういうものを、一歩一歩積み重ねていく。
他人から評価を受けるのは良い。
例えば、「ビッグな小説家になる」という夢があるとする。それを一度に叶えるのは無理だし、どう叶えるかも抽象的である。
しかし、例えば小説を書くたびに評価を受け、そこを改善して次作を書く、ということをやっていると、自分の苦手克服、他人から見た自分の作品の立ち位置、そういったものが明確になる。「ビッグな小説家」への道が、曖昧な雲の上ではなく、階段のように一歩一歩進んでいけるものに見えてくる。
そして、書けば書くほど、「ビッグな小説家」というものの定義もおのずとわかってくるだろう。ひとえに「ビッグな小説家」と言っても、誰もに評価されるような超有名な作家なのか、あるジャンルで高く評価されるマニアックな作家なのか、同人誌で大人気の作家なのか、人によって解釈は異なる。
ネガティブなプライドではなく、ポジティブなプライドを積み重ねていきたい。
プライドとは、必ずしも悪者ではないのだから。
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