第2話 天井②
2つ目は、語彙力の天井である。
これは非常に単純で、「こういうことを書きたいのに、いい表現が見つからない」というもどかしさだ。
それは単語のこともあれば、ことわざのこともあれば、フレーズのこともある。頭の中で抽象的なイメージはあるのに、いざ言葉にするとなると戸惑ってしまう。
これは特に、作品のイメージが映像で降りてきた時に厄介である。
フレーズを思いついたのなら、脳から紙またはPCにそのまま写せば事足りる。しかし、映像の場合、映像から文字に変換する作業が生まれる。ト書きから映像に仕立てる映画とは、真逆の作業である。
そして、映像に登場する全ての情報を文章に落とし込むのは難しい。映像と文章が持てる情報量の差が原因である。映像と同じだけの情報量を詰め込めば、必然的に文章は冗長になる。
この場合、言葉選びや描写などを通し、文章にできるだけの情報を盛り込むというのが、小説にできる限界だろう。つまり結局のところ、それを可能にする語彙力が重要なのだ。
さて、語彙力とは何だろうか。
端的に言えば、適切な言葉を選ぶ力だろう。
そのために必要なのは2つの力だと思う。
1つ目は、知識。
その言葉を知っていないと話にならない。
2つ目は、その言葉を選ぶセンス。
特に描写などでは、後者が重要になってくるだろう。
しかし、センスは別に生まれつきのものではなくて良い。今まで作品を読んできた中で培った知識が、センスに進化して作者の文章を磨いてくれる場合もあるだろう。
そうすると、結局のところ、いろいろな作品を読むのがよい、ということになってくる。いわゆる乱読である。
小説を書くなら小説を、と思われるだろうが、小説だけに限らなくてもいいと思う。今や、様々なメディアが存在する時代だ。小説に活かせるかは別として、とにかく吸収するのが大事だと思う。活かせるか否かは、将来の自分が査定してくれる。
センスというものは、磨かれるものである。
宝石は、宝飾店に飾られているような状態で発見されるわけではない。人の手で磨かれ、カットされることで、あの状態になるのである。最初から綺麗な状態で生み出すことなど、どだい無理な話だ。
そして、色んなものを吸収しているほど、宝石は個性的になる。宝石は、同じ種類であっても一つとして同じ模様や色のものは存在しない。ゆっくりと、自分の個性を醸成すれば良い。
かくいう私も、言葉のマスターというわけではない。常に言葉を探求し、様々なものを吸収し、センスを磨いていく必要がある。
物書きは、永遠の旅人なのである。
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