解釈、創造、そして解釈

『広島』でなく『ヒロシマ』と書けば、それは歴史的事件の現場。その事件をいかに伝えるでしょうか。散々言及される『風化』を避ける形で。

本作は現在の広島で『ヒロシマ』がいかに伝えられているのかを語ります。網羅的でなく多数の側面を飛び飛びに切り出して。ですから『断章』です。

事件当時の物は、原爆ドームは今もそびえていますが、多くは残っていません。事件を語るものは多くが後世に作られたもの。そこには解釈だけでなく創造も加わることを本作は教えます。しかし事件を偽る欺瞞ではありません。創造により後世の人の心中により正確な像を結ばせ得ることも教えます。

そして本作も『ヒロシマ』を伝える創造物が連なる大河の一部として創られました。解釈は読者に任されています。

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