第25話・こうして俺は脅された?


 当然、学校側から呼び出しを受けた。


 まあ、普通に退学になってもおかしくはないのだが、どうにか停学処分で収まった。イケメンロミオが、先に喧嘩を吹っ掛けたのは自分たちの側だと教師に言ったらしい。


 どうやらロミオは本気で俺のチンコに負けを認めたらしい。これで、あのファングループも少しは大人しくしてくれるだろう。


 俺はこんこんと説教をされたが、馬耳東風。馬の耳に念仏で聞き流す。

 説教聞いて品行方正にしていれば報われる人生ではなかった。少なくとも俺の周りの大人はクズだったので、いい子ちゃんにしてると、とことん食い物にされる。

 とはいえ、教師の面子も立ててやらねばならず、反省した振りだけはしてやらねばならない。敵に回したっていいこと無いしな。


 テキトーに反省文を書いたところで、生徒指導室から解放された。ちなみにトーマとシュウは無関係を決め込み、逃げ延びることに成功。ラオウも停学処分だが、素っ裸になった俺より罰は軽い。


 夕方の廊下を一人歩いていたら、横にいた魔王に話しかけられた。


『言い出しっぺの友人は逃げおおせたけど、君はそれでいいのかい?』


 ――いいだろ、別に。うまく逃げるのもそいつの才覚ってやつだ。


 ま、トーマの扇動に乗っかることは俺が選んだことだし、納得はしている。


 ――あいつら全員、クズだからな。逃げることなんて織り込み済みだよ。俺だって同じ立場なら逃げる。


 綺麗な友情なんてものは、D特区には無い。


騙し騙され、互いに利益を生み出しながら、いい距離感でバカをやるだけだ。俺たちは能力が無いのに弱肉強食の競争社会に放り込まれてるんだから、生き残るためには、どんな手段だって取らなきゃならない。騙したり、裏切ったり、利用したり、そういう生き汚さが無ければ蹂躙されるだけだ。ま、度が過ぎれば、罰を受けて死ぬだけで、それ以上でも以下でもない。


 ――あいつらは自分がクズだって隠さない分、お前みたいに善人面した悪党よりよっぽどマシだよ。


『私が悪党であることは認めるけど、それは君以外に対してだよ』


 ――他人を撃ち殺してる奴が銃持ちながら君だけは撃たないって言ってきても信用できないだろ。


『……私の銃が君の銃でもあると理解してほしいな』


 そんな魔王の言葉を鼻で笑いつつ廊下を歩いていく。

教務室など特殊教室のある棟は、放課後になるとひと気が無い。斜めに差し込むミカン色の夕日の中、歩を進めていく。

ふと、廊下の先に誰かが立っているのが目に入った。女子生徒だ。まあ、気にせず歩いていたら、その女子生徒が俺のほうへと近づいてくる。


 目が隠れるほど前髪が長く、前が見えているのか疑問なのだが、しっかりとした足取りで俺のほうへと歩いてきた。左に避けようとすれば、女子生徒も俺の対面に動いて来る。まるで互いに牽制しているような動きをしながら歩いていたら、とうとう女子生徒が目の前に立った。


 躱そうと俺が左に動けば、ついてくるし、右に避けても妨害してくる。


「え? なに?」

「えっと……」


 うつむきながらモニョモニョ言っている。


「……その……あなた……ですよね?」


 か細い声だった。そして、俺の股間を見ながら喋っている気がする。


「え? なんだって?」

「あなたが私の……」


 女子が顔をあげる。前髪の間から見えた目には、なぜか涙がにじんでいた。


 え~? 俺、なにかした?

 いや、したな。今日、チンコ出して多くの女子にトラウマ刻んだばっかだわ。


「……ですよね?」


 声がか細過ぎて何言ってるか聞き取れない。


「えっと、今、なにか言った?」


「……天誅仮面ですよね?」


 その言葉に俺の脳はフリーズした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無能力者だった俺がダンジョン動画配信でバズったんだが聞きたいことある? ~転生魔王や美少女動画配信者と一緒にダンジョンで無双します~ TANI @aiueo1031

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ