ハレの友達

星雷はやと

ハレの友達

 

「楽しかったね」

「うん、楽しかった!」


 夜空に星が輝き、提灯が淡く照らす参道の階段を下る。祭囃子を背に、二人分の下駄の音が響く。隣を歩く友達に夏祭りの感想を伝えると、友達は声を弾ませた。


「でも……もう少し遊びたかったなぁ……」

「……仕方ないさ、小学生は寝る時間だ」


 祭はまだ続いている。しかし小学生の僕たちは夜更かし禁止である為、後ろ髪を引かれながら帰り道の途中だ。友達も名残惜しいのか、声が沈んでいる。


「あ……鳥居だ」


 話しをしていると、神社の敷地の縁に辿り着いた。祭と日常の境界線に立つ鳥居に、物悲しさを覚える。


「じゃあ、私は此処までだ。来年も遊ぼう?」

「……え? うん。来年もその次も遊ぼう!」


 急に足を止めた友達を不思議に思いながらも約束を口にした。周囲が暗く友達の表情は分からないが、嬉しそうな雰囲気を感じる。


「あれ? ……誰だっけ?」


 鳥居を通り抜け、振り向くと声をかけようとした。だが、何を誰に伝えようとしたのか分からない。先程まで誰かと一緒に居た気がするが、思い出せない。無人の鳥居を見ながら、首を傾げた。

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ハレの友達 星雷はやと @hosirai-hayato

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