第8話 活動日記

 まさか彼女から食事をお誘いが来るとは、驚いたけどやっぱりうれしい。

 彼女とはあれ以来しばらく話していない。ゴミ出しの日にたまに会っても会釈程度で終わった。気づけば夏は終わり涼しいランニング日和になった。けれど未だにジュディーさんとあの日二人っきりで帰ったあの瞬間だけは新鮮に残っている。というのも一橋の頃にいた彼女のことを思い出したからだ。あいつ今何してんだろ。俺の後釜は親の七光り容姿端麗慶応ボーイらしい。まあいない女なんて考えてもな。

 俺は彼女に「いつがいいですか?」と手紙を書いて彼女の部屋のポストに入れた。

 彼女からも「10月の頭はどうですカ?」と返ってきた。食事会の日は10月の第1週の日曜に決まった。

 その後も軽い文通をするようになった。ラインとかやればいいじゃん!いや、スパイをすると何故か紙でのやり取りが好きになるもんだ。(俺だけかもしれない)

 結局、彼女が自分のラインのQRコードを手紙に貼り付けて「読み取ってくださイ」と書くのでこの文通は終わってしまったが。


 ある日俺はいつも通り彼女からの手紙が入っていないか確認したら、真っ赤な封筒を見つけた。中身を確認すると案の定中国当局からの手紙だった。

 どうやって日本の税関突破したんだよ!当局は頭がいいのか悪いのか本当によく分からない。こういう事は出来るのに、俺の体にGPSをつけて監視しないのは流石に失敗だと思う。俺は4億円もらったまま逃げたってできるんだぞ。やばいだろ。

 唯一やられたことと言えば僧帽筋に"忠経”と彫られた位だ。"忠経”というのは"陳忠経”のことで共産党の周恩来が国民党に送ったスパイの内で特に優れていた三人衆を後三傑と呼び、その中の一人のことである。つまり俺のCNは忠経。ダサいかもしてないが俺は周恩来が好きなので全然気にしない。彼と俺は自分の哲学や境遇が似ていると思う。

ちなみに残るCN:熊向暉はヨーロッパ支部として中国の一路一帯にEUで唯一参加していたイタリアに、CN:申健はアメリカにいるらしい。


 そして書いてあった内容がこうだ。

「親愛なる忠経。わが党の一員として異国の地で研鑽を積んでいること賞賛に値する。新天地での生活は慣れたであろうか。さて、来たる日本一路一帯参加日はもう近い、我々は来年の旧正月から本格的に動く。そこで君には最初の任務を遂行してもらいたい。日本のタクシー産業の秘密を抜き取れ。中国人を大量に日本各地に送り白タク産業を展開する。そして日本のタクシー産業を衰退及び交通網を麻痺、日本の"足”を奪うのだ!勿論今もやっている内政をまとめたレポートも月一提出すること。検討を祈る。」


 いよいよ本格的な任務が来た!スパイの血が騒ぐ。

 俺は日中は仕事、夜はスパイ活動を行い倒れこむような激務をなんとか二週間で終わらせた。様々なシミュレーションを仮定して分析。なんとか最適解をまとめたレポートを当局に提出した。在日中国人たちによる白タク産業がうまくいけば日本はかなりの経済損失を被る。日本人で心はかなり痛むが4億もらったからと悪魔を演じる。


 やっと普通の時間に家に戻れる~とドアを開けようとしてふと隣の明かりがないことに気づいた。

 この時間には普通ジュディーさんはいるはずなんだけどなぁ?まあ飲み会でもしてんだろ。

 まあ仕事は終わったし、もうすぐ10月。早くご飯行きたいなぁ~



(この物語では、虚実な団体、特定の国の名前をお借し一部、信憑性が極めて低い内容を書いていますが、全て物語を楽しむ上でのフィクションですので安心してお楽しみ下さい)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る