第10話 高級料理

 いよいよ待ちに待ったジュディーさんとのお食事の日。ワクワクが止まらない。正直心臓がバクバクして昨日なんか全く寝れませんでした。(スパイは何事にも動揺してはいけないのに…)

 服選びとかどうしよう。女の子と一緒にご飯を食べたことって元カノ以来じゃないか⁈ああ何にもわからない。でも外見重視のくそ女(元カノ)には俺のファッションについて口出しされたことがないぞ。

 いくら中国に貢いでるとは言え、流石にSHEINを着る程俺は堕ちていない。秋らしいトーンで服を選ぶことにした。

 会社に慣れてジムにいける余裕ができたので俺の体は今最高に仕上がっている。自称細マッチョの鎧に黒のプリーツパンツ、白のニットウールの上に茶色の無地のカジュアルジャケットを着る。仕上げにギラギラしてるネックレス、ワックスを使って髪は七三分け、香水もかける。服を着ても隠せない筋肉質な肩が俺のチャームポイント。すらっとした長い脚もしっかりご健在で。完璧ジャン俺。


 午前中はそれぞれ自由で時間になったら俺の方から彼女にお声掛けすることになっている。場所は麻布で彼女が予約をしてくれた。俗に言う、回らない寿司屋だ。

 ご飯のジャンル選びには紆余曲折があった。彼女から中華料理を提案されたが俺は中華料理は嫌になるほど食べたからとお断りさせてもらった。逆に俺がイタリアンを勧めると彼女にアメリカではピザをめちゃめちゃ食べるし、パスタでは外食する新鮮さがないと言われた。配慮が足りなかったと思う。

 麻布はジュディーさんが通勤で利用している日比谷線が通る六本木、虎ノ門の方面で大学のために地方から上京して来た俺なんかよりもジュディーさんの方が比にならない程知っている。


 さて、準備ができたので彼女を呼ぶとするか。俺は彼女をドアをノックする。引っ越しの挨拶の時を思い出した。

「は~~~イ!」ジュディーさんの返事が聞こえた。

 ガチャ…

 目の前に現れたジュディーさんはまさに彫刻のような美しい女性だった。

 一度部屋にお邪魔させてもらった時のように髪は束ねてなく肩甲骨の辺りまでサラサラな髪を垂らしていて、もともと白い肌がさらに白く、可憐なアイシャドウにつけまつげ、石楠花色の唇、ピンクゴールドのイヤリング。芯があるきれいな体にエレガントなエメラルドグリーンの長袖ドレス。これでもかというくらい開けた胸元には零れ落ちそうな彼女のバストがしっかりこちらに訴えてきた。この彼女の服装からかなり本気で準備してくれたことが伝わってうれしかった。それほど俺に向き合ってくれて楽しみにしてたんだな、と。

「お待たせ。さあいきましょうカ!」


 いつもの坂もいつもの横浜駅も隣に女性がいると全て新鮮に感じる。俺は完全に空を飛べるほど浮足立っていた。周りからの羨望の目が気持ちいい。俺は今最高に美しい白人女性と一緒にいるというのだから!


 寿司屋に着いた。大理石のテーブルでご飯を食べた。有り得ない位旨い。

当局はコッソリ日本のEEZに入って乱獲、日本の漁獲量を減らして漁業を衰退させようとしているが日本にこんなおいしい寿司がある限り無理だなと確信した。


 すぐに平らげてしまい、食後にスターバックスに行った。ここでは彼女とゆったり話ができた。お互いの今日までの出来事だったり(無論スパイのこと以外)。ラインがダサいと言われたことはそこそこショックだった。ビジネスマンなんだし恰好なんて別にいいじゃんと勝手に思っていた。


 すこし麻布の街を散歩してよさげなバーを発見したので予定にはなかったが入ってしまった。ワインをたくさん嗜んだ。ジュディーさんも珍しくほろ酔いしていた。3店で払ったお金の合計を計算する。(勿論彼女とは割り勘、まだそんな関係じゃない)目を疑った。15万だったからだ。まあそんなのへでもない位には幸せだ。


 店を出るともう日が暮れていた。すこし酔った彼女は大胆で手を求めてきた。彼女の手は冷たかった。俺はカジュアルジャケットを彼女にかけた。いつもの坂を登る時、お互い黙っていたが今日の思い出を振り返って嚙みしめていて目が合うと笑いあった。


 互いのドアの前に着くと俺は思い切って

「好きです。付き合ってください!」と頭を下げ彼女に手を差し出して言った。

「Head up,please~」と彼女が言うので顔をあげると彼女がOKヨと言わんばかりに俺の頬に接吻をした。

 そしてワインで酔ったからという理由では片付けられない程赤くなった顔で

「bye~♡」と言い、部屋の中へと入ってしまった。


 俺はしばらく放心状態になっていた。

 彼女に貸したジャケット?そんなのどうでもよかった。



(この物語では、虚実な団体、特定の国の名前をお借し一部、信憑性が極めて低い内容を書いていますが、全て物語を楽しむ上でのフィクションですので安心してお楽しみ下さい)


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スパイの俺のお隣さんは俺の恋人で敵国のスパイ⁈ よらんじゅ @yggdrasill1397

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