第3話 初対面


 ガチャ…

「Hallo~♪」

「………!」


 俺の頭はもうすでに真っ白だった。お隣さんが日本や中国でも見かけない白人女性で、しかもボンキュッボンな美人お姉ちゃんときた。まじでパンクしていたのでしばらく何をしようとしているか忘れてしまったが、なんとか意識を保った。勿論、そんなことは顔に出さない。なぜなら俺はスパイだから。


「…?こんばんハ!」

「…あ!はじめまして。お隣に引越してきたものです。餃子作りすぎたのでよかったら食べてもらえませんか?」

「Off courseでス~!」

お隣さんは嬉しそうに餃子を受け取りキッチンに置きに行った。


 良かった、任務遂行できた~(スパイ脳)じゃ、戻りますか。

 日本の隣人関係はいい意味でも悪い意味でもさっぱりしている。昔はそうでもなかったのだろうけど。中国に留学した時に隣人関係はほどほどにしたほうがいいと身に染みて感じたのだ。

 というのも、俺が中国で借りていた家は日本でいう○○荘のようなアパートで、ご近所さんと会うたびに中国語ができるからという理由で地方訛りの早口の中国語でまくしたてられたり、(耳は鍛えられたが、)アパートの大家が住民を集めて近くの中華料理屋で宴会をして大勢で騒いだり、若いから、と裏庭のネズミを駆除したり、チベット仏教のお坊さんにならないかと勧誘もされた。スパイになったことも一理あるが、日本人にはねちっこすぎる隣人関係もまた俺が留学を早く切り上げる要因の一つだったのだ。

 もう一人静かに暮らしたいんだ。いくら中国に憧れてもその以前に俺は一日本人なんだ、日本が結局一番好きだと中国に行って気づさかれた。

 特に大学時代上京して住んでいた立川は最高だったなあ~と思い出しながら

「これからよろしくお願いします。さよなら」と言ってお隣さんのドアから離れて、家のドアを開けようとするとギュっと手がつかまれた感じがした。

 俺にとって手首を握られるのは、中国時代の黒ずくめトリオを思い出されてトラウマなのだ。くそ!不覚にも手首をつかまれた!いったい誰なんだ…!また当局の奴らが日本にまで追ってきたのか?

「放せ!!」

「キャアアア~」

 手首が解放され振り返って見てみるとそこには薄手のラフなパジャマにショートパンツのお隣さんがしりもちをついていた。よく見るとさっきはよく見えなかった色艶いい全身が見えて、あんまり直視できなかった顔もやはり美しい。そして胸元にはまるで黄河が河の流れが激しい上流で中国の大地を何万年とかけて刻んだような素晴らしい谷間があらわになっていた。絶景を見て全俺の血がある一点に集まろうとしていたが何とか自分を律して、決して顔には出さず(なぜなら俺はスパイだからだ)紳士的に

「ごめんなさい。大丈夫ですか?」と聞いた。

 彼女は異性に痴態を見られて恥ずかしいといった素振りは見せず、こういうのはよくあるし普通だわと言いたげな態度で素っ気なく立ち上がると彼女は

「No problemでス。それより私の家に寄っていきませんカ?」と言ってきた。

 あっけらかんとしていると今度は優しく俺の手を握って(流石にトラウマは湧かなかった)自分の部屋へと連れ込んだのだった。



(この物語では、虚実な団体、特定の国の名前をお借し一部、信憑性が極めて低い内容を書いていますが、全て物語を楽しむ上でのフィクションですので安心してお楽しみ下さい)

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