命の魔女

にわ冬莉

いのちのつかいかた

「本当にいいのかね?」

 その問いに、笑顔で頷く。

「ええ、もちろんよ」

 そして老婆に渡された不思議な筒を口に咥えた。

 ふぅぅ、と息を吹き込めば、大きなシャボン玉のようなものが出来上がる。


「では、望みどおり、お前の命をあの子に」

 窓を開け、虹色に輝くソレを外へと飛ばす。

 飛ばされたソレは、高く空を泳ぎ、いつしか見えなくなった。


「これでお前はその命のほとんどをなくしたことになる。生きてもあと数か月だろう」

 これほどまでに嬉しい余命宣告があるだろうか。


――命の魔女。


 その名の通り『いのち』を自在に操れるという彼女の存在で私は救われた。いや、救ったのだ!

 開け放たれた窓の向こうに広がる空を見て、私は束の間、自分勝手な喜びに身を委ねたのである。

 今にも消えてゆきそうな娘の命を繋ぎ止めることができた。そのためなら、この命を捧げることも厭わない。


 どうして娘が高いビルから飛び降りたのか。

 その理由すら、知ろうともせずに……。



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命の魔女 にわ冬莉 @niwa-touri

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