玉藻という謎めいた存在と彼女が産んだ異様な子供が中心の、独自の物語世界

源為義と白拍子・玉藻の間に生まれた子供、八郎の誕生を軸に展開する歴史ファンタジーです。時代考証や歴史的事実に基づきつつも、玉藻という謎めいた存在と彼女が産んだ異様な子供を中心に、独自の物語世界を構築しています。

登場人物の造形が特徴的です。主人公の源為義は、乱暴者として知られる一方で、家の繁栄を願う父親としての顔も持つ、時代の荒波に揉まれた武将といえます。対する玉藻は、美貌と才能を兼ね備えながら、人間離れした神秘性を漂わせる女性として描かれています。二人の出会いと交流、玉藻の懐妊・出産が丁寧に描写されることで、登場人物への親近感と物語への没入感が高まります。

背景描写には、時代考証の跡が見られます。平安末期から鎌倉初期にかけての、武士の台頭と朝廷の衰退という時代の流れが、白拍子という存在を通して象徴的に表現されています。人々の価値観の変化や当時の慣習などについても、物語の随所で言及されており、当時の時代背景を感じさせます。

赤子・八郎の異様さが、物語全体に緊張感を与えています。整いすぎた容姿と、母親と決別するかのような玉藻の不穏な言葉。八郎の正体と、彼の存在が今後の物語にどう影響するのかは謎のままであり、先の展開への期待が高まります。

この物語は、時代物としての風合いを持ちながら、ファンタジー的な要素も絶妙に織り交ぜた作品だといえます。登場人物たちがたどる運命と、その先に待つ結末、そして物語の鍵を握る八郎の存在に注目が集まります。

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