明るくキュートなメインキャラクター・アムルとユースティスが織りなすファンタジー。
テンポ良い物語の魅力だけでなく、個人的に風景の描写が素敵だと思っています。特に森の描写です。
第3話、2人が住む<エルムの里>の描写はこちら。
こぢんまりとした一階建ての家々には、木造であることが分からないほど表面に緑の蔦や苔が生い茂り、森の一部に見える。
まるで妖精や小人たちが住む場所のようで、アムルは、この村が大好きだ。
村の中央には、神樹となる大きなハルニレの木があり、そのすぐ傍に向かう拝殿はある。
ハルニレの根が屋根を覆っているため、ぱっと見には、それと分からない。
生い茂る葉と蔦を掻き分けると、ようやく扉らしきものが見えた。
湿った緑の匂いと木漏れ日が、ふわっと立ち昇るようです……!
ファンタジーの風味と作品の厚みを広げる描写に包まれた本作、ぜひ風景を想像しながら読んでみてください!
御伽話のような、柔らかいメルヘンな冒頭から始まるこの物語。
しかし進むについて、骨太な設定が物語を貫き、少女を取り巻く厳しい世界と環境が露わになってきます。
そんな状況でも、決して明るさを失わない少女の健気さ、そして少女を守ろうとする少年が魅力的。
その少年も秘密を抱えており、そして旅路に同行する男も男で何やら過去を抱えている様子。
しかし男の、その過去の影にも潰されず向かい風の中に佇立するような様子もまた、物語に魅力を添えています。
まだ物語は序盤ですが、それぞれがしっかりとした意志と目的を以って進む登場人物たちの行く末が楽しみです。
物語を構成する文化、自然、生き物……全てが繊細に描写されており、この作品だけの世界観へ引き込む力を持っています。
文芸としての王道ファンタジーを読みたい方は、ぜひ開いてみていただきたいです。
主人公がまだ幼い少女なので、難しい話が分からなかったり、自由な行動が目立ったりもしますが、そんな彼女がこれから始まる壮大な旅の中でどのような成長を遂げるのか、という期待へ繋がっています。
故郷の外に広がる世界は、彼女の目にどう映るのでしょうか。
冒険、魔法、ドラゴン、聖樹など、単語を並べるだけでもワクワクできる魅力の詰まった本作。
世界を救うべく立ち上がった少女の旅路を、一緒に応援しましょう!