このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(129文字)
母親の味の定番。それが味噌汁だ。ただ、これも今や昭和のテイスト。だから問いかけられても真っ先に味噌汁が出る人の割合は年々減少しているようにも思える。そんな時に本作を読むと無性に飲みたくなる。味わいはその家の個性。徐々に進化する過程も家庭の忘れられない味なのだ。
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昔気質のお父様とのふれあい。子供時代から今へと至る思いの変遷。短い文章の中に、愛があふれています。ほっこりと温まります。
口が悪く、不器用な父親を邂逅する短いエッセイです。最初は、亡き父親への恨み節で始まる本文ですが、その時代の常識が感じられて興味深いです。また、男子厨房に立たずという世代だったお父様が晩年、定番味噌汁を作るようになったのはどういう心境の変化だったのか……。特別な具ではないお父様の味噌汁は、なかなか言葉では伝えにくい世代の精一杯ので感謝や愛情表現だったのか知れません。それをおいしいと感じ、いつか天国でも伝えたいという作者は、お父様の気持ちをしっかりと受け止めていたのだと思います。
家族の愛はドラマや映画の中ではなく私たちの身の回りにある。作者さんの感性はさりげない日常に潜む愛を見逃さず掘り起こす。さりげなく大きな愛に育まれた人にしか書けない物語。読後、お父ちゃんが羨ましいなあと思ってしまった~!
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