第2話 運命の交錯

 母親の夢を見た翌日、病室の扉が静かに開き、中に入ってきたのは、母親のアンの妹であり、理人リヒトの育ての親でもあるリンだった。


 凛の髪は、母と似た柔らかい茶色で、肩まで流れる長さにカットされており、その毛先は優雅にカールしていた。彼女の目は、深く温かい茶色で慈悲深さと知性を表していた。眼鏡をかけている彼女の顔は、それを通してより魅力的に映り、知識と洞察力を象徴していた。


 凛は、年齢よりも若く見え、その姿は落ち着きと品格を兼ね備えていた。凛の立ち振る舞いは、自信と落ち着きに満ちており、彼女の存在は部屋に穏やかな雰囲気をもたらしていた。彼女の服装はベーシックなアイテムをスタイリッシュに着こなしたシンプルな装いだが上品で、彼女の優しさと強さを表していたが、彼女は理人にとって母親の杏の影のような存在であり、その慈悲深い眼差しはいつも理人に安心感を与えていた。


 現在の凛は、同じ血筋を汲むまり家が運営する蹴鞠けまり博物館の館長を務めていた。この博物館は、まり家の祖先が蹴鞠の名人として名を馳せた歴史を伝える場所で、貴重な古文書や歴史的な蹴鞠の具などが展示されていた。凛はその伝統を守ろうとガイドツアーを自ら行ったりして、その知識と情熱を博物館の運営に注いでいた。


 部屋に入ると、凛は自然と周りの空気を和ませ、理人の心にも穏やかさをもたらしました。理人は凛を見上げ、彼女の顔に浮かぶ深い心配の表情を読み取った。


 凛はゆっくりと理人のベッドの横に座り、彼の手を優しく握った。彼女の目には深い心配と愛情が満ちていたが、久しぶりの再会だったこともあり、二人の間にはわずかなぎこちなさが漂っていた。


「理人、具合はどうなの?」


 凛の声は柔らかく、彼の心の痛みを察しているようだった。理人は微笑みを浮かべようと努力したが、痛みで歪んでしまった。


「叔母さん、来てくれてありがとう。もう大丈夫だよ」と理人は弱々しく答えた。


「それで、何があったの?」

 凛の問いかけに、理人は一瞬ためらった後、深くため息をついた。理人は凛の深い眼差しに迷いながらも、自らの心の内を吐露し始めた。


「実は、ある女の子・・・ミヤビに出会ったんだ、彼女は特別な存在で、僕は彼女に認められたくてヒーローになろうとしたんだけど…」


 理人の声は途切れがちで、失敗の記憶に苦しんでいた。凛は理人の話を静かに聞き、彼の苦悩を受け止めた。


「ミヤビと出会ったのね。そして、彼女は重大な宿命を背負っている…」と彼女はつぶやいた。凛の言葉には、理人に対する同情と、彼らの運命の重さが込められていた。理人は頷き、さらに付け加えた。


「でも、自分の力不足を痛感したんだ。父さんのことも頭をよぎるし…あいつの過去が僕の未来を縛ってるみたいで…」


 凛は深く息を吸い、言葉を選ぶようにして話し始めた。


「理人、実は君に伝えておかなければならないことがあるの。」


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