エピローグ
入院中、理人は多くのことを考える時間を持ち、自己の在り方について省みることができた。昔の理人は失敗や不完全な結果を許容できず、自己の評価が低くなることを恐れ、不安と焦燥に苦しんでいた。
そして、ミヤビから授けられたエレメンタルフォースは、最初は彼にとって強大な力であると同時に、その魅力に取り憑かれるあまり、コントロール不可の自己犠牲的な暴走から旧市街の住民たちに多大な被害をもたらした。それが彼の内に大きなコンプレックスとなり、自己を受け入れることができずにいたが、今は違う。
母・
長い入院生活から解放され、理人は再び自分の足で歩けることに感謝の念を抱きながら、病院のある中立エリアを後にした。
「理人君、おかえりなさい。退院したんだね。」
宙太の声には温かさが溢れており、理人はハニカミながら応えた。
「はい、退院しました。宙太さん、この度はお世話になりました。」
と、挨拶した理人の心には一つの気掛かりなことが残っていた。彼が発動したエレメンタルフォースの暴走により
「宙太さん、本当にすみません。あの時のこと、あなたが被った負担…」
宙太さんは優しく笑って応えた。
「理人君、それは仕方ないよ。君が無事で戻ってきてくれたことが何よりの喜びなんだからさ。」
そして、理人は古書店内を見渡した。すると、一角に佇むミヤビが本を手に取って熱心に読んでいるのが目に入った。理人は静かに近づき、ミヤビに声をかけた。
「ミヤビ、久しぶりだね。」
ミヤビは本から顔を上げ、理人に微笑みかけると、新たな始まりを告げるかのような予感が理人の心に広がった。
幽愁のモラトリアム 悠鬼よう子 @majo_neco_ren
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