第6話 始まりの記憶

 LABOの静かな処置室で、アレクサンダー・フィールズは理人リヒトの手術準備に忙しい中、過去を思い出していた。若き日の彼は、清潔感あふれる白衣を身に纏い、医師としての自信を放っていた。


 その日、アレクサンダーは指導していた研修医のヘンリー・タイラーと一緒に、院内で開催されているチャリティバザーを散策していた。アレクサンダーはその中でも落ち着いた風格を漂わせ、ヘンリーは若々しいエネルギーと探究心を隠せない様子であった。ヘンリーの濃い茶色の髪は綺麗に整えられており、ヘンリーの目は新しい知識への渇望で輝いていた。ヘンリーのスクラブは機能性とデザイン性を兼ね備えていて、彼の新進医師としての地位を表していた。


 バザーは病院の広々としたホールで開かれており、様々な出店が並んでいた。バザーの一角にある露天では、古代文明の石板が展示されており、その周りには好奇心旺盛な人々が集まっていた。ヘンリーはその石板に目を奪われ、歴史的な重要性とその美しさに心を惹かれていた。


「これは素晴らしい…、龍の起源と言われているマチウケワニの化石が付着しているなんて、古代の生命力の神秘を説き明かしたくなりますよね。」


 ヘンリーは目を輝かせながらアレクサンダーに向かって興奮気味に語った。彼の指は石板に付着しているマチウケワニの化石に指をそっと触れた。その慎重な仕草は、古代の生命に対する敬意と好奇心を示していた。彼の顔には発見の喜びが溢れていた。


 一方、アレクサンダーは興奮状態のヘンリーとは対照的に落ち着いた口調で応じた。


「確かに、これは特別なものだ。しかし、その価値は科学的な発見だけにあらず、歴史や美術の分野でも重要だろう。」


 その時、彼らの傍らで美しい女性が石板を見つめていた。彼女は「この石板、家のテーブルの天板に使うと素敵でしょうね。実は、私、この石板の出品者なんです。」と静かに語った。


 ヘンリーは石板について熱心に語り、「研修医の身では、この値札に提示されている金額を持ち合わせていません。ですが、これは私の研究にとって非常に重要なものなので、買取金額の交渉をしていただけないでしょうか?」と尋ねた。


 彼女は微笑みながら「それなら、私と食事デートをしてくれたら、この石板をあなたに格安でお譲りしますよ。」と提案した。


 ヘンリーは「それは光栄です。喜んでデートさせていただきます」と応じた。


 アレクサンダーはこの出来事を回想し、ヘンリーとアンの出会いが理人の運命を形作ったことに感慨深く思いを巡らせていた。手術室の扉が閉ざされると、彼は理人の未来に向けて全力を尽くすことを心に誓った。

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