離婚届不受理申出書

離婚が決まった。

離婚届も漏れなく記入した。


しかしながら、まだ実際に提出する段階ではありません。何しろ、この離婚届はレターパックライト(強調)で一方的に送られてきたもの。これから慰謝料の金額や財産分与など、詳細を話し合わなければなりません。そこで登場するのが「離婚届不受理申出書」という重要な書類です。


この耳慣れない書類には「私以外の人が離婚届を持ってきても受付しないでくださいね?」という効果があります。言わずもがな、離婚にはトラブルがつきもの。相手が勢い余って、勝手に書いた離婚届を提出するなんていう事態も起こり得ます。もちろん署名を偽造するのは犯罪ですが、本人の筆跡なんて市役所の職員は知るわけもないので、無断で作成された離婚届も不備がない限り受理されてしまうのです。怖い。


そんな離婚届は無効でしょ? なら怯えなくていいんじゃない? そう思った方もいるでしょうが、ひとたび受理された離婚届を無効にするには、家庭裁判所に離婚無効の調停を申し立てる必要があり、さらに相手が認めない場合には訴訟を起こさなければなりません。裁判にかかる長い時間、弁護士への高額な謝礼、刻々と過ぎてゆく年月、やり場のない怒りと憎しみ……。そう考えれば、事前に対策するに越したことはないでしょう。


記載事項は以下の通りです。

・両人の氏名

・生年月日

・住所

・本籍

・申出人の署名


用紙は市役所の戸籍課で受け取りましょう。頻繁に使う書類ではないので、記入台には用意がないかもしれませんが、窓口で請求すればもらえるはず。私は離婚には同意でしたが、離婚協議がまとまらない事態を想定し、念のために提出しました。手続はごく簡単で、10分程度で終了。離婚は人生に関わる一大事なのに、予想以上にあっさりで思わず拍子抜けしたほどです。


この手続に有効期限はなく、申請した本人が取り下げるまでずっと効果が続くので、いざ離婚届を提出するとなったタイミングで「離婚届不受理申出取下書」を提出する必要があります。これも非常に簡単な書類ですし、万一忘れたまま離婚届を提出しても「不受理申出書が有効です」と教えてもらえるはずなので、身構える必要はありません。色々な制度があるのですね。


提出する時は何とも心苦しい気分でしたし、相手が悪事を働くと決めつけたくはないですが、これから離婚して一人で生きると決めた以上、自分の身を守る行動はやはり積極的にするべきではないでしょうか。

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