子供がいたら?

話の順番が前後しますが、私が離婚を即決できたのは、子供がいなかったからという理由が大きいです。


いえ、本当はいました。長い不妊治療の果てに息子を授かりました。しかし彼は、ある朝私が起きたら、SIDS(乳幼児突然死症候群)で死んでいました。生後わずか2か月半。皮膚は紫色に変色し、プラスチックのように硬くなり、ピクリとも動かない変わり果てた私の赤ちゃん。あの光景は、それはええ、一生忘れることができません。


その件については、一昨年のカクヨムコンに応募した不妊治療のエッセイに書いたので、機会があればそちらもチェックしていただけると嬉しいです。あれから不妊治療が保険適用になり、それ自体は大きな進歩だと思いますが、残念ながら現状では年齢制限や回数制限があるんですよね。勇気を出して不妊治療を始めても、全員が保険適用の恩恵にあずかれるわけではないので、さらなる制度拡充が今後必要なのではないでしょうか。


それから、子供の話題でもう1つ。新しい人と知り合った時に、結婚の有無を問われて「バツイチです」と答えると、必ずその後に「お子様はいらっしゃるの?」と質問されます。私は静かに「いいえ」と答えます。事実ですから。そうすると相手は「それはいいですね」と口にします。私は笑顔で「はい」と答えます。


私は子供がいないから自分の気持ちだけで離婚できた。

子供がいる女性にそんな自由はない。しがらみがない私は贅沢な立場なんだ。


わかりますよ、そういう理屈も。でも私は、息子に縛られたかったし、息子のためにもっと悩んで苦しみたかった。こんな残酷な自由あるかよと思いつつ、しかし事情を話すと長くなるので、いつも「はい」で無難に会話を終わらせてしまいます。相手に悪気がないのもわかりますからね。なのに、わざわざ自分から争いたくないですし。


あとは、婦人科の問診票に「未婚・既婚」という欄があり、バツイチはどっちだろうと悩みつつ未婚にマルをつけたら、未婚=出産経験がないという前提で検診が進んでしまい、診察室で慌てて事情を説明するなんていう出来事もありました。それ以降は自分から進んで「離婚、流産1回、出産1回(死別)」と書き込むようにしています。結婚や出産は女性にとって非常にデリケートな問題。とはいえ婦人科の診療において出産経験の有無は重要なので、そこはそれと割り切って正確な情報提供に努めたいところです。

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