1000文字以内に脱出せよ‼
日野唯我
脱出ゲーム
目を覚ましてから暫く辺りを見回してすぐに、自分が見知らぬベッドで横たわっていることに気付いた。真っ白な壁で六面を仕切られた小さな部屋はまるで監獄で、ベッドと小さなテーブル以外何も見当たらない。
木製のテーブルの上には一枚の紙切れが置かれていて、傍に置かれているボールペンで殴り書きされたのだろうか、乱暴な文字で「1000文字以内に脱出しろ」と書かれている。
状況が全く掴めない。何か大事な手がかりを見落としている気がするが、こうしている間にも文字数は着々と消費されているので悠長に考え事をしている暇は無い。
まずは観察。もう一度部屋を見渡すと、一枚板だと思っていた正面の壁に小さな隙間を見つけた。あそこをこじ開ければ出られるかもしれない。
だがそんな期待は儚く散った。隙間は5㎜も無く、指の先を入れるので精一杯だ。とてもじゃないが力ずくじゃ開けられない。
どうしようかと悩んでふと下を見た時、何やら小さな数字が書かれているのに気がついた。暗号のようだ。
「/3 63,42,12,15,54,6,15,60」
数列にしては随分と値がバラバラだ。全て3の倍数ではあるが…。
「/」
そういえばスラッシュ記号は割り算を意味するな。つまり、これらの数字を3で割ればいいのかもしれない。
そうすると、「21,14,4,5,18,2,5,20」
最大値が21、最小値が2か…。
刹那閃いた。昔、似た暗号を解いたことがあった気がする。もしかして、この数字をアルファベットに変換すれば…?
「underbet」
つまり、ベッドの下…?
急いで確認すると、丁度指一本が入りそうな大きさの、小さな穴が空いているのを発見した。
指を入れてみると、小さなボタンに触れた。そのまま強く押すと、カチッと音がして、さっきの隙間が自動扉のようにスライドして開いた。
目の前には灰色の廊下が見えた。よし、脱出成功。
数メートル程真っ直ぐ進み、角を折れた所で廊下は行き止まりになった。そこにはただ、真っ白な扉があるだけ。
嫌な予感はしたが、恐る恐る扉を手動でスライドさせる。同時に思わずあっと声を出してしまった。そこには真っ白な部屋。ベッドと木製の机。さっきと瓜二つだ。
そうか、思い出した。まるで酸欠の様に段々意識が遠のいて行く中で、記憶が鮮明に蘇りつつある。
ポケットからボールペンを取り出すと、最後の力を振り絞り、テーブルの上の紙切れに書き走る。
「1000文字以内に脱出し
1000文字以内に脱出せよ‼ 日野唯我 @revolution821480
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