冷たい手は、二人で温め合うためにあるんだよ。

 推しの握手会に行った主人公は、その会場で行われたミニライブで、推しの卒業を知らされる。それは主人公にとって、支えがなくなることを示していた。何故なら主人公の彼女にとって、アイドルである女性は日常で生きる活力そのものだったからだ。
 主人公は女子高校生でありながら、日中に書店でバイトをしていた。推しを失った主人公は、バイト先でも荒んでいった。そんな中、一人の女性が主人公に声を掛ける。
 その女性はこの辺りを観光していたらしいのだが、実は自分の素を探していた。そんな女性の旅に巻き込まれる形で、主人公は行楽地などを案内して回る。その度の中で、主人公と女性の距離は縮まっていく。
 しかし、女性も訳アリであると同時に、主人公もまた、辛い過去、そして秘密を抱えていた。女性は主人公を助け、二人の距離はますます縮まっていく。
 
 心の支えを失った女子高校生と、素の自分を探す女性。
 冷たかった手は、お互いに温め合うことを欲しているようだった。
 百合小説というだけではなく、家族の在り方や、生き方の物語。

 百合が苦手な方にもお勧めの一作です。
 是非、御一読下さい。

その他のおすすめレビュー

夷也荊さんの他のおすすめレビュー1,211