推しのアイドル「凛奈」が卒業してしまい、心の拠り所を失ってしまった「世奈」でしたが、ある日、バイト先でそのアイドル「凛奈」と偶然の再会をします。
憧れの存在との夢のような時間を過ごす世奈でしたが、凛奈は凛奈で自身の「最後の地」を探しているところなのでした。
一方の世奈は、アイドル「凛奈」の存在でつらい家庭環境をぎりぎりで耐えている状態でした。
やがてふたりは互いの事情を知ることとなり、アイドルとファンという関係ではなく、女の子同士で惹かれていくようになっていきます。
そこには共依存のような危うさがあり、また、つらい現実を見て見ないふりをする日々でもあり……。
主人公ふたりの心の痛みが丁寧に描かれ、それを舐め合うようなふたりの関係には百合とは違った尊いものが感じられます。
互いに依存しつつも、このままではただ問題を先送りしているだけだと自覚しながらも、解決への道を進めない日々。けれども一方が前を向き始めると、置いて行かないで欲しいと願ってしまう心の脆さ。
どのような結末を迎えるのか、最後まで見届けたい作品です!
百合や共依存といったワードに惹かれる方、痛みや不幸の中で生きていく姿に共感を覚える方、ぜひとも一読くださいませ!
※このレビューは「第52話 身体で繋ぎ止めたくて」が最新話の時に書かれたものです。
推しの握手会に行った主人公は、その会場で行われたミニライブで、推しの卒業を知らされる。それは主人公にとって、支えがなくなることを示していた。何故なら主人公の彼女にとって、アイドルである女性は日常で生きる活力そのものだったからだ。
主人公は女子高校生でありながら、日中に書店でバイトをしていた。推しを失った主人公は、バイト先でも荒んでいった。そんな中、一人の女性が主人公に声を掛ける。
その女性はこの辺りを観光していたらしいのだが、実は自分の素を探していた。そんな女性の旅に巻き込まれる形で、主人公は行楽地などを案内して回る。その度の中で、主人公と女性の距離は縮まっていく。
しかし、女性も訳アリであると同時に、主人公もまた、辛い過去、そして秘密を抱えていた。女性は主人公を助け、二人の距離はますます縮まっていく。
心の支えを失った女子高校生と、素の自分を探す女性。
冷たかった手は、お互いに温め合うことを欲しているようだった。
百合小説というだけではなく、家族の在り方や、生き方の物語。
百合が苦手な方にもお勧めの一作です。
是非、御一読下さい。