純粋だからこそ一途に愛し、純粋だからこそ復讐する

純粋に健気に、良い子で、恋人を愛していた香苗。
恋人のためなら自分を犠牲にするのも厭わない。
有能で優しくて気遣い上手の恋人が、実は、既婚者だった──。

恋人の裏切りによって心がズタズタに引き裂かれてしまった香苗。
物語前半の恋人同士の甘くて優しいやりとりが、後半は一変、狂おしいほどの復讐に変わります。

純粋だからこそ、染まりやすい。染まってしまったらもう、元には戻れない。
そんな悲しみが香苗の言動から伝わってきて、復讐を遂げてスッキリ!というだけではない何かを、読者の心にひっそりと置いていきます。
純粋な人が裏切られたときの怖さは、静かでありながら、ゾッとするほどの冷たさを醸し出す。熱がない恐ろしさ。

タイムリームと絡めた復讐劇は恐ろしくも甘美で、ダークな世界の虜になりそうです。
ご堪能ください。

その他のおすすめレビュー

遊井そわ香さんの他のおすすめレビュー789