あめつち
「今日も海が綺麗ですよ、姉さま」
姉は、彼にとって世界そのものだった。また、姉からしても弟は特別な存在だった。そこにあるのが純粋な家族愛のみだったとしても、仲睦まじい姿に周囲はおぞましさすら
少年の首筋に、つうっと一筋の鮮血が流れた。痣から溢れ出た血は止まることなく、一滴、また一滴としたたり落ちる。
双子とは、体は二つでも、限りなく一つに近い二つだ。彼が片割れの死を感じたとき、己もまた遠からず死ぬのであろうという予感はあった。今に至るまで執念と愛だけで命を長らえさせていたにすぎない。
今生で
「姉さま……。おれも今……、そちらへ参ります」
残照の中に烈々とした波音だけが響く。
墓前には首が転がっていた。音もなく、ころりと。
焦がれ首 十余一 @0hm1t0y01
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