僕の彼女は押しに弱い

 ネタバレありです。注意。



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 あらすじ


 主人公の瀬川 太一せがわ たいちは同じクラスの鈴代 渚すずしろ なぎさを好きになり、高校一年の夏休み前に告白して付き合い始めます。ところが渚は、されるがままに太一の要求を受け入れていき、3回目のデートでは早くもエッチにまで関係が進みます。


 しかし逆にそのことが太一を心配させます。“僕の彼女は押しに弱い”のではないかと……。


 二学期が始まると、渚は変わっていきます。俯きがちで自身無げだった彼女は、背筋を伸ばし胸を張り、見た目にも気を遣うようになって目立つようになり――――そうなると太一は余計に心配になります。自分なんかがすぐに関係を深められた渚が、他の誰かの手に掛かったらあっという間に奪われてしまうのではないか――と。


 本作はそんな寝取られそうで寝取られないヒロインとその恋人を描いた作品です。



 ◇◇◇◇◇



 太一は目立たない普通の男子高校生。マイナス思考が目立ち、これと言って特技はありません。運動なんて苦手な部類です。彼は力を隠し持ったスーパーヒーローではない所が大事です。


 渚も同じく目立たない内気な文学少女。実のところ素材はかなり良いのですが、過去やコンプレックスもあって俯きがち、声も小さく体も弱かったのです。


 渚の願いで学校では二人はただのクラスメイト。

 ただ、二人ともエッチには積極的なので放課後はいつも一緒。

 そんな秘密の関係のまま、毎日を過ごします。


 よくあるラブコメでは、二人がくっつくまでをせつなく描くことが多いのでしょう。

 ですが私は、くっついてからの方を描く方が好きです。


 リアルの離婚率とか見れば、“幸せに暮らしましたとさ”で済むことはそうありません。恋人になってから別の気になる人が現れたり、別れたり、また元に戻ったり、愛情だって弱くなったり強くなったり。じれったくてもどかしいのも良いのですが、作者がせっかちなのもあってあまりやられ過ぎると、ガチに真正面から語り合ってさっさと解決してくれって思うので。


 まあそんなわけで、太一と渚の前には様々な困難が立ち塞がります。

 困難と言っても、普通の恋愛モノの困難ではなく、どちらかというと寝取られモノのエロ同人みたいな困難がw いや、だってああいう胸糞なオチのエロ同人展開を躱す話ってまず無いじゃないですかw 楽な導入でエロ展開に持って行くのですから当然寝取られる側に感情移入すると鬱憤も溜まるでしょうし。


 渚と太一は物語を通じて成長し、強くなっていくのも特徴です。二人とも、だんだんと正しい判断ができるようになっていきます。



 ◇◇◇◇◇



 各章毎のあらすじとシチュエーションを簡単に紹介します。


 本作は、とにかく解決が早いです。特に毎話、読者様が読んでいて安心できる所まで話を進めます。普通、小説を盛り上げるなら話の終わりで不安を煽るものですが、そのセオリーを完全に無視しています。何より自給自足を旨とする作者が自分で読んでいてモヤモヤして腹立ってくるのですw


 本来は4話程度で『寝取られには巨乳がよい』くらいのボリュームで書く予定でした。

 結局、話が長くなりましたが、二章エピローグまでが本来の話です。



 一章 クラスメイト


 クラスメイトには秘密の関係、そして『演劇』というシチュエーションの中での寝取られです。

 演劇をやっていると当然ラブシーンなんかもあったりするわけですが、それのソフト版ですね(ガチでやるとベッドシーンになってしまいますし)。演技の中での恋愛感情が実際の恋愛感情に反映され、そのまま奪われていくという。実際にキスするわけではありませんが、太一にはかなり堪えたはずですし、恋人関係は秘密なので文句も言えません。



 二章 演劇部


 こちらはタイトルと反して『演劇』というシチュではなく、どちらかというと『職場』シチュでの寝取られですね。

 普段一緒の彼女が出向先へ入り浸るようになり、帰りがどんどん遅くなる。連絡があってもそっけない返事。送り迎えするのは出向先の先輩。ようやく会えると思ったら主人公のミスでヒロインを独りにしてしまう。そして拒絶……という。

 さらに、ヒロインへの脅しが加わります。写真をダシに身体の関係を迫る間男です。ただ、これに対するヒロインの反撃が、私なりの脅迫に対する回答でもあります。


 幕間 温泉旅館


 まあベタなやつですね。シチュエーション的には渚よりも、第二のヒロインとも言える渚の母親が狙われるようなシチュエーションです。声も掛けられてましたし。ただ、酔わされたのは大学生でしたが。



 三章 恋人


 ここでようやく二人は恋人になり、渚の過去の問題の解決に繋がっていきます。

 それからシチュエーションとしては『文芸部』ですね。文科系部活の大人しいヒロインを寝取るチャラ男、あるいは暴力男といったところで、二章からの続きとなります。ただ、この頃になると主人公もヒロインも強くなってきている上に周囲の信頼も得ているため、暴力でゴリ押しするしかなく、結果、容易に解決されてしまいます。


 幕間 打ち上げ


 ここで主人公の浮気を捏造してのヒロインの寝取りが試みられました……が、主人公の変態っぷりが発揮されて事なきを得ました。



 四章 日常


 こちらは二人のイチャイチャですが、いくらかコアな嗜好ネタに踏み込んでいます。

 寝取られシチュとしては寝取られビデオレターがありますが、完全にコメディですw


 

 五章 彼女の友達


 まずは主人公の痴漢冤罪によるジャブから、ヒロインの幼い頃を知っているハトコという馴れ馴れしくヒロインと接する相手との遭遇が発生します。こちらは意趣返し的な反撃が行われます。

 そしてメインは成金エロ体育教師による寝取られシチュ。弱みを握ってヒロインの友人を貶め、さらにはヒロインにまで手を出そうと……。ただ、いくら間男が無敵の人でも弱点が多すぎるので……。



 六章 親戚


 ハトコも再登場となりますが、今回の敵はハトコの親で、ターゲットは第二のヒロイン、渚の母親ですね。武道に通じる強い女性があの手この手で絡めとられるシチュです。主人公としては、ぜひ第二のヒロインを救ってハートを射止めて欲しい所ですが、メインヒロインが怒るのでまあ無理でしょうw 身内での問題というものは半ば洗脳に近いものもあり、問題を大きくしたくない平和的な考えの人との相乗効果で、他人との問題よりも面倒なことになることは多いと思います。この辺は『寝取られには巨乳がよい』と同じです。

 あと、本来であれば悪役だった七虹香ですが、本章を通じ、太一と渚にとって欠かせない大事な相手に昇格してしまいます。



 七章 旧友


 主人公のかつての親友が敵となります。主人公が信用し、逆らうこともない相手による寝取られシチュです。強くなった主人公とヒロインでも太刀打ちできないような強敵ですが、意外な人物が策を講じます。

 この頃になると主人公を取り巻く周囲の人物も増え、関係も複雑になってくるので文章の情報量が増えて書くのが大変になってきます。初期のように複数の問題を突っ込むのも難しくなります。情報が伏せられてる環境の方が話を書きやすいのはいつも同じです。



 八章 後輩


 まず登場するのは周りからイジメられていた後輩からの寝取られシチュです。立場の弱い相手にはヒロインも隙をみせやすくなり、付け込まれる可能性もありますね。ヒロインの弱点なのでこの部分で押すのも良かったのですが、主人公が逆にその点、強すぎて無理でした。これは五章の経験あってこそです。

 さらに今回は正体の見えない集団が相手です。こちらは最初、『1984』的なネタで攻めていましたが、黒幕の正体に作者が気付いてからはいろいろ予定変更となりました。いや、途中まで黒幕が誰かわかってなかったんですよ、作者w



 九章 日常


 ラブホ街から現れたヒロインと謎の男。NTRスタートのラブコメのオマージュから始まります。まあ、ほぼほぼ主人公の誕生日の話です。視点を変えたりして雰囲気を楽しんでもらえればと思いました。

 その後は二人のリゾートバイトの話。初めての社会経験がまた二人を成長させます。



 十章 体育祭


 平和なラブコメ界に降って湧いた洗脳勇者ならぬ、不条理ハーレムラブコメ主人公が十章の敵です。ヒロインは次々と不条理なラブコメトラブルに巻き込まれていきます。もはやホラー!

 もともと作者は『やたら好かれるけど誰とも関係が進まないハーレム主人公』とか『いつまで経ってもモヤモヤばかりで決着がつかないラブコメ』とかは、不条理モノという感覚が強くて、映画の『クローバー・フィールド』とか『ミスト』と似た印象があるんですよね。その辺の怖さを感じていただければと思いました。いや、共感はできないでしょうけどw



 ◇◇◇◇◇



 ヒロインの渚については、エピローグでも書いた通りエロ同人のテンプレ文学少女寝取られモノの文学少女を想定しています。体力無い文学少女が間男とのエッチに嵌って主人公を蔑ろにするとか無いでしょ!――って思ったのが始まりです。主人公の太一は体力のない渚を思いやり、渚は徐々に体力をつけていくことで嵌っていきます。


 何ら特別ではない二人が――渚は間男を引き付けるために容姿が秀でていますが――お互いを大事にし、周りを含めて強固な関係に育っていくのを眺めていられるような物語ではないかと思います。



 ◇◇◇◇◇



 最後に投稿者として。


 本作、一部の読者様にめちゃくちゃ喜んでいただけた作品でとにもかくにもたくさんのご感想を頂けました。やっぱり、感想の量というものは個人的に人気のバロメータですね。既存話にも感想をいただけたのは特にありがたかったです。


 もちろん『堕チタ勇者ハ甦ル』も本作を上回る感想を頂けて、あちらはフォロー数より感想数の方が遥かに多い稀有な作品になったのですが、『堕チタ勇者ハ甦ル』は『僕の彼女は押しに弱い』の人気あってこそ読んで頂けたものと考えております。


 本作、学園物かつヒロインが寝取られていないため読んで頂けた部分は大きいと思います。それまで(処女作を除き)寝取られヒロインばかり続けて書いていたので、普通の恋愛モノが読んで頂けたのはやる気を継続させるためにはちょうどいい機会だったのではとも思います。これがウケてなければ執筆に飽きてやめていた可能性も高かったですし。


 それまで作品にロクに感想を頂けていなかった作者だったのですが(NTR復縁モノはマイナス感想が多いので±ゼロかマイナス寄りでした)、本作で初めてまともな感想を頂けました。その嬉しかったことと言ったら!


 とにかく、この作品がカクヨムメインに移るきっかけとなりました。なろうでも連載していたのですが全くと言っていいほど反応がなく、虚無過ぎたので二章以降は同時連載をやめました。


 ただまあ正直なところ、何がそんなに好かれているのか未だによく分からない部分もあります。『文芸部にて』回とか特に。どういうところが好きかとか書いていただければ、その辺意識して頑張りますので、応援コメントお待ちいたしております。



 何卒、宜しくお願い申し上げます。



『僕の彼女は押しに弱い』

https://kakuyomu.jp/works/16817330659896643512



 

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