Episode 004 大きな地震? 魂が脈打つその瞬間。


 ――動き出していた。もうすでに。


 僕を覆っていた静寂は、もうそこにはなかった。……懐かしくも思える感覚。



 ちょっと前とも思える騒めき。教室で行われていた騒めきが、そこに蘇った。白色の世界が色づき始めた瞬間。それを目の当たりにした。話しかけてくる僕に。それは難しくもない普通の挨拶。「おはよう、こんにちは、こんばんは」と、そんな感じのものだ。


 僕は「はい」か「いいえ」

 その二つしか持ち合わせていない……と思っていたけど、


「ねえねえ君、学校の七不思議に興味ある?」と声を掛けられた。すぐそば。俯き加減の顔を上げたら、目の前には女の子の顔。癖のないボブの丸い顔……可愛らしい子だ。


「あるにはあるけど、どうして僕に?」と、答えていた。


 何故? 何故だろう?


 言葉が真っ白になるとか、いつものような緊張感が不思議となく……何と言ったらいいのか、どう表現したらいいのか、脳内に回転灯があるような感じで、回る回る回る纏まらない思考。グッと僕の手を掴み、彼女は引っ張って「君も一緒の方が楽しいから」と、そのまま走り出した。「あ、待ってよ!」と、もう一人の女の子まで追いかけてきた。


 もう一人の女の子は、ナチュラルショートとかいう髪型。この子もまた可愛らしい。それにしても、どうして僕だけに? ナチュラルショートの子は、どうやら僕を引っ張っているボブの子を追いかけているようだ。なら、二人は面識があるのか? 僕は問う。


 無口な上にコミュ障。でも、そこを通り越して、


「君、名前は何? 僕は星野ほしの旧一もとかず」と、自分でも驚くような声で、自己紹介をした。いやいや自然にそうなっていた。ボブの子は丸い顔を、まるでニコちゃんマークの見本のようにして「じゃあ旧号きゅうごうだね。ママがそう言ってたね、君のこと……」と、意味ありげ見え見えのような台詞を発した。それでも脳裏は走る疑惑のキーワード。『旧号』と『ママ』


 そんな中でも聞こえてくるボブの子の声……「北川きたがわ瑞希みずき、宜しくね」と名乗った。



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星のステップ! 大創 淳 @jun-0824

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