第7話 作品の成仏
久々の更新です。
今回は特殊なエタりの話です。
自分の場合、連載が終わり完結済となってもそれで終わりという気にはなれません。
特に小説についてはキャラに我が子の様に思い入れがあるが故に、少しでも日の目を見させてやりたいと思ってしまいます。
その為には読み合いも決して悪い事ではなく、切っ掛けとしては十分ありだと思います。
自分のような無名な者の作品など放置しておいて読んで頂ける義理などない訳ですから。
もしそれで相手様が途中で離れてもそれは好みのタイプとは異なっていただけと割りきって、自作に合う方との出合いの場を新たに探してやるのも生みの親としての責任、と思って頑張る事もあながちイケナイ事でもないと思うのです。
そして自分の場合、完了時のコメントもしくはレビューに(作者あてでなく) 頑張った主要キャラに対して言葉を貰えたとき、その作品が昇華して (成仏と言うのもヘンですが)、もう後は自由にしてもいいよ、と思える様になるのではないかと思ったりします。
そもそも自分の場合は読者が少ないので作品に共感出来る方から納得のいくだけのキャラ達への言葉を頂くのは大変な事です。
そこは、PVが多い程満たされる自己承認欲求と少し異なり、PVが1つでも構わないからこの子へと一言言ってあげて欲しいという親バカみたいなものでしょうか。
故に……作品に対して、
『心の琴線に触れる出合いを作るというエタり』
そんな沼に入ってゆくのです。
* *
そんな自分がたった1回の出逢いで作品の成仏を感じてしまった事が一度だけ有ります。
それは小説でもイラストでも無く、音楽での事。
**
もうかなり前の事ですが、父が闘病の末に他界したあと、私は何も親孝行が出来ていなかったことに1年以上贖罪の念にかられていました。
生前父は、私の妹(異母兄妹)が音楽系の専門学校に通いボーカリストを目指して頑張っていて、将来歌手になる夢を本人と共に楽しみにしていたのですが、その活動前に他界してしまい、妹も卒業後は特にデビューも出来ず燻っていました。
何かしてやれたら……と思っていたある日、突然一つの曲想が浮かび、即座に作詩、作曲。
その歌は、父との別れも頭にあったからか、次のようなものとなりました。
*――― * (歌詞要約) *――― *
さよならを言う機会もなく去って行ってしまったもう会えない大切な人……
それを想い悔み続けた果てに見出した感謝の気持。
―――いままでありがとう
あなたを忘れた日など たった1日もなかった
吹き荒れ続けた嵐は今 隙間風となり突き抜ける
そんな時思い出す あの笑顔
気が付けばいつも見てくれていたあの眼差し
あなたの与えてくれた愛の大きさは
どんな物にも勝るものだった
―――いままでありがとう 大切な思い出を
何もかも、いつまでも忘れない――――
*――― * *――― *
という様な内容のもの。
その歌が人であれ大事にしていたペットであれ、残された全ての者の癒しになって欲しくて……。
それを妹に聴かせて持ち歌としてやって見るか聞いたら首肯しました。
自分は即座に仕事以外の全ての時間を充てて、
著作権の勉強
ボーカロイドで歌を完成
DTM製作会社に編曲依頼
レーベル設立
妹の撮影
フォトショでジャケット作成
DTM会社とレコーディング
CD製作会社に発注
JASRAC契約
レコチョク契約
ホ―ムページ作成
と次々にすすめて全てをお膳立てして行きました。
そして漸く一通り出来た所でYoutubeに曲を載せるべく、ジャケット撮影時に撮り貯めたスチール画像を使ってのフラッシュ動画作成を地方の安い業者に依頼しました。
何度かのメールでのやり取りした後、無事完成品のDL先が記されたメールが届きました。
そのメール内容に自分は運命の力を垣間見て、愕然としたのを覚えています。
そのメールの内容はこんな感じでした。
そこでは担当者は胸の内を赤裸々に明かしてくれました。
こちらの作った歌詞を見て歌を聞いた瞬間、『これを作る事は自分の運命だ』と感じ、会社へは特別に在宅ワークの申請をして行う事にしたと言うのです。
―――その担当者が数年前に小児性のガンを患い亡くした愛娘を思って。
そう、マトモな気持ちでやれる筈が無かったからです。
『一生分泣きながら作った。後にも先にも自分以上にこれに感情移入した者等いないでしょう……』
そう彼は言い切っていました。
結びには感謝と応援の手短な言葉が添えられて。
あの曲で一人でも心が救われたら……そんな気持ちで作られた曲がそう、世に出す前に有り得ぬほどの共感を得られてしまったのです。
故に完成CDを妹に渡し、Youtubeにアップロードした後の私は妹の活動には干渉せず見守るだけとなりました。
もう私の中では既に作品の昇華が果たされてしまったからです。
その後、妹は知り合いのアマチュアバンドのボーカリストとなり、そのオリジナル曲も演らせてもらえるようになり、ライブ先でCDの販売等も行ったりもしましたが、今はプロの道を断念して仲間内と趣味でやっているようです。
* * *
作品への共感は多いほど良いですが、私のように最低限このくらいは、というラインも有るかも知れません。
それが例えば世界の殆どの人が酷評しようとも、この人だけが絶賛してくれるならそれも有り、と言う出逢いも有るかも知れません。
―――あなたの大切な作品。
そこに込められた想いは誰かに届き、そして昇華されていますか?
もしまだならば、そうなる事を祈っています。
では今回はこれで……
――――
諸人エタりて ~愛すべき恵多(エター)なる全ての人に捧ぐ 深宙 啓 (Kei misora) @kei-star
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。諸人エタりて ~愛すべき恵多(エター)なる全ての人に捧ぐの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます