因習国グルメ

私はホラー小説が苦手なのだと思っています。ですがこの作品は読んでみたいと思わされ、手に取りました。

とても陰惨な習俗に関わらなくてはならなくなった人々の物語。
少女達の生い立ちから旅路、宮殿の様子、そして食事までが子細に描かれ美しいです。ホラーというよりは歴史小説ではないかとも感じました。

ですが通底する支配・被支配の関係性。国家・大陸規模で強制される宗教的因習。
淡々と仕事をこなす男たちや宮女の真実の思いはどこにあるのか明かされません。逃れられず、逃れようともしないその在り方はむしろ恐ろしく、これはやはりホラーなのでしょう。
因習村のスケールが大きいものだ、と思ってよく見たら、タグに〈因習村ならぬ因習国〉とありました。なるほど。

死へと向かうことで自らの生に向き合う少女達。
最終的にどうなってしまうのか、どうぞご一読下さい。

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