願ってはならないモノに縋りつく。邪悪なものは欲望が生む。

  • ★★★ Excellent!!!

 マンションディベロッパーの優秀な営業の皐介。彼のもとに「あなたの娘です」との手紙を携えた幼女きよが現れた。人の死を予言するような言葉を残すきよだが、本当に自分の子かもわからないまま、皐介は父親としての愛情を傾け始める。
 一方で身の回りでは謎の人死にが続き、きよに取り憑いている何かを感じて調べ始めるが……。

 第1話から早々に皐介の営業手腕が垣間見えるのですが、まず仕事のできる男の怖さを堪能することができます。「怖さってそこ?」って思われるかもしれませんが、あの口の上手さはある意味ホラー。私の人生でもこういう人に落とされたことがあるのではなかろうか……なんてちょっとビクリとしてしまいました。
 皐介の口の上手さ、世渡りの上手さはプライベートでも活かされ、女性関係は奔放。しかし誰でもいいわけではなくしっかりいい女を見極め愛情を向けるさまが、女たちも読者も惹きつけ鷲掴みにされてしまうのでしょう。

 怪しい裏の世界もちらりと覗かせつつ、『きよに取り憑く何か』を追った先のラストは、「これぞ」と「こうくるのか」がない交ぜの複雑ながらも小気味よい満足感でした。
 正統派ホラー、恨みや情念、人間の残酷な恐ろしさ。読み進めるほどに本当の怖いものは何であるのか、様々なものが思い浮かぶゾクゾク感がたまりません。ホラー好きな方はもちろん、少し苦手な方も人間ドラマを読んでみるつもりでディープな世界を覗いてみてほしいと思います。

 あっ。でも推したいのは、「直前まで不穏な言葉を発していたアナタはどこへいったんですか?」と思わず突っ込みたくなる、きよちゃんにはデレデレ甘々の皐介パパです♡

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