あとがき

 この度は拙作『地球の娘とウチュウジン』を読んでいただきまして、まことにありがとうございます。

 作者のシトールと申します。

 先に申し上げておきますが、あとがきは拙作に対するネタバレに関して自重しません。

 もしも『あとがきから先に読もう』と思っている方、または『途中だけどあとがきを読もう』と思っている方がいらっしゃった場合、本編を最後までご覧になられてからの方が、楽しみを損なわないかと思います。


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 さてこの『地球の娘』ですが、カクコンを目指して書き上げた作品になります。

 前回が異世界ファンタジーのカテゴリで挑んだため、今年は別のカテゴリで挑んでみようと思い、最初は『ラブコメ』を想定していました。

 春編などは大きなドンパチも少なく、落ち着いた展開になっていた(当社比)と思うのですが、それはラブコメを想定していたからでした。

 ですが秋編で主人公の母親である美樹が酷い目に遭うというシーンを描くにあたり、『これはラブコメというカテゴリで良いのか……?』という疑問が湧き、結局はラブコメカテゴリではなく『現代ファンタジー』のカテゴリに落ち着いたわけですね。

 私としてもこれまでの執筆経験上、現代を舞台にして異能力などをぶち込み、00年代のラノベのような作品を書くのは慣れていましたし、そもそも題材が好みということもあって、本作は結構すんなり書く事が出来たと思います。

 変にラブコメに拘らず、バトル展開にしたのも結果的には良かったかな、と思います。


 本作のテーマは『世界規模の大事件の行く末が、主人公とヒロインの恋愛の成否に左右される』というものでした。

 スゲェでかい事件が起きてるのに、周りのオトナは主人公とヒロインの恋愛を見守るしかない、みたいな。

 まぁ、いわゆる一種の『セカイ系』というやつですね。(?)

 実際に出来上がったモノを見ても、ミスティックという脅威に対して大福とハルが協力しないと解決出来なかったというところ辺り、テーマに沿った話にはなったのではないか、と思っています。


 想定通りにいかなかったのは青葉と蓮野の扱いですかね。

 青葉は当初、ヒロインの一角として考えており、大福に対する強めの態度と裏腹にしっかり恋心を抱いているキャラとして動かすつもりでした。

 最初は秘匿會のエージェントであることもあり、仕事のために大福とハルをくっつける事が決定されているため、自分は一歩身を退くというムーヴで、蓮野が登場してからは『大福と付き合うのは誰でも良いかもしれない』という思考になり、自分も大福のパートナーとして立候補する、みたいな。

 ただ、トリプルヒロインにすると結構手間になるのと、蓮野に対して嫉妬する役回りがハルだけで済んだ方がキレイだという事もあり、青葉はヒロインから一枚格落ちしてしまいました。

 でも青葉自体は良いキャラとして描けたのではないかと思います。

 私が描いた妹キャラの中でも相当上位に存在しているほど、理想通りの妹キャラなのではないかな、と思います。


 蓮野の方は、本当は最終的に死亡する予定でした。

 敵側の人間として戦って死ぬことが、まぁ丸いかな、と。

 ですが途中で私の中に(このお話には三つのエンディングが存在する)という謎の思考が持ち上がりまして……。

 秋編くらいを書いてる途中で、なんかこの話が恋愛シミュレーションだったらルート分岐しそうだなぁ、と思い始めてしまったんですよね。

 それがハルルート、蓮野ルート、修羅場ルートという三つのエンディング。

 ハルルートではエルスウェムヤダを倒し、その過程で蓮野も死ぬ。

 蓮野ルートではエルスウェムヤダから蓮野を解放出来たものの、その過程でハルが死ぬ。

 そして修羅場ルートは今回描かれたエンディングになります。

 当初のプロットではハルルート一択だったのですが、途中で蓮野というキャラにも愛着を覚えてしまい、死んでしまうのは嫌だなぁ、と思ってしまった結果、エンディングが変わっちゃうという事態になりました。

 私の場合、作品を書いている最中にプロットが変わるという事はよくあるのですが、今回の場合は結構大幅な改変になってしまいましたね。

 なんとなくお話が破綻してないように思えてるので、結果オーライです。


 さてヒロイン語りついでに、ハルの事も話そうと思うのですが、彼女もまた当初の予定とはちょっと違うキャラクターになっていました。

 これはプロット固める前の、『なんとなくこんな話が書きたいなぁ』と思っている段階の事なのですが、彼女はもうちょっとおしとやかというか、高嶺の花然としているキャラクターの予定でした。

 また、本当は地球からの影響で能力を得るわけではなく、ミスティックから影響を受けて能力を得ることによって秘匿會から監視される立場にある、というキャラクターでもあったので、厭世的な思考を持ち合わせるはずだったんですよね。

 冬編でのシーンも、実は彼女が秘匿會に封印され、大福が彼女を助け出すという全く逆の立ち位置だったはずなのです。 

 ですが出来上がったハルという娘はもっと活発で、打算的で、思ったよりも人間臭いキャラクターに出来上がっていました。

 これはこれで魅力的なヒロインとして出来上がったのではないかな、と思います。

 それでも根っこのところはブレておらず、『最初は普通の生活を望んでおり、秘匿會のお世話になっているものの、望むものが普通の生活ではなく大福と一緒にいる事に変わる』というキャラクターの変化というのは描けていましたし、普通の生活に対する羨望を吐露するシーンも、私個人的には良く描けたなぁ、と思っております。


 ヒロイン周りの変更は、より『ラブコメ』として魅力的に書こうとした結果でして、その甲斐あってヒロインはそれぞれの魅力が出たんじゃないかなぁとはうぬぼれています。


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 今作を形作るにあたって、重要な要素であった『ミスティック』『神秘秘匿會』『ウノ・ミスティカ』という勢力は、私が過去に書いた作品からの流用でして、別作品にも登場しておりました。

 西部開拓時代をモチーフにした作品では、『地球の娘』で言われていた二百年前のアメリカで起きた人類とミスティックの最初の闘争を。

 そして春編でチラッと出てきた謎の島、折布追島という発音しにくい島を舞台にしたお話も書いておりました。

 どちらも本作とは設定がやや違う、別世界での出来事という立ち位置にはなるのですが、外宇宙の脅威たるミスティックと、それに対抗するための秘匿會、ミスティックに迎合するウノ・ミスティカという根っこの設定は変わっておりません。

 上記二つの作品も、暇つぶし程度にいつか公開できればいいなぁと考えておりますので、その際には是非ご一読ください。


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 長くなってしまいましたが、あとがきはここで締めさせていただきます。

 ノリと勢いで『あとがき書いてみようぜ!』と書き出したは良いものの、何を書いたら良いのかわからなくなってしまい、取り留めのない内容になってしまいましたが、ここまでのお付き合い、ありがとうございました。

 ご縁があれば、また別作品でお会いしましょう。

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地球の娘とウチュウジン シトール @shitor

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