大嘘つき

藤野 悠人

大嘘つき

 ある所に、大変な大嘘つきがいました。それも、ひとりふたりではありません。何百人も、何千人も、何万人もいたのです。彼らはお互いを知っていることもあれば、知らないこともありました。有名な嘘つきも、そうでない嘘つきもいました。


 彼らは皆、常日頃からたくさんの嘘を考え続け、また、自分の嘘を披露できる相手を探し求めていました。その手腕を振るい、相手を術中に掛けてやりたいと、誰もが考えていました。


 大嘘つき達は、非常に用意周到でした。彼らは極めて真剣に、また綿密に、それでいて大胆不敵に作戦を立て、長い時間を掛けて計画を練り、そして実行しました。実行する時の手口は様々ありましたし、彼らはそれぞれ、得意とする手口も十人十色でした。


 そして、みんな必ず、計画を実行する時には、予告状を書いたのです。


 ある者は、劇的でドラマチックな嘘をつきました。


 ある者は、穏やかな優しい嘘をつきました。


 ある者は、人が思わずクスッと笑うような嘘をつきました。


 ある者は、思わず目を背けたくなるような嘘をつきました。


 ある者は、人を恐怖に陥れる嘘をつきました。


 こんな大嘘つきが、日本全国 通津浦々つづうらうら、広い世界のあちこちに、それどころか長い歴史の中でも、数えきれないほど存在したのです。


 まったく、とんでもありません。彼らはなぜ、それほど嘘をついたのでしょう。


 そして、最も不思議なことには、彼らの嘘を責める者は、ひとりとしていなかったのです。


 では、みんな喜んで騙されたのでしょうか。それは半分正解で、半分間違いです。


 彼らは腕によりをかけ、また手を変え、品を変え、たくさんの人たちを楽しませ、面白がらせ、励ましてきたのでした。


 そんな大嘘つき達は、世間では大体こう呼ばれています。


 作家、あるいは物書き、ってね。

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大嘘つき 藤野 悠人 @sugar_san010

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