はじめましての方も、お久しぶりの方も、いつも読んでくださっている方も、まるっとこんにちは。藤野悠人です。
『ピグマリオンの祈り』をお読みくださり、誠にありがとうございます。
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【執筆背景・制作秘話的なもの】
本作はXでの告知ポスト、あらすじ、そしてタグにも記載しております通り、人形作家であり、YouTuberとしても活動をされている猪瀬暖基氏に取材をさせて頂き、同氏をモデルに構想、執筆しました。
重ね重ねにはなりますが、猪瀬氏とスタッフの皆様に厚く御礼を申し上げます。
さて、本作のテーマとしてまず一番にあるのは、猪瀬氏への私にできる最大限の応援です。
彼の存在を知ったのは、今から一年半ほど前になるでしょうか。本作の主人公・伏野海理がしていたように、YouTube Shortの動画で偶然見つけました。
第一印象は「なんてクールなんだ!」。
ご存知の通り、私自身は文章という形での創作ですが、猪瀬氏は人形という立体物。体を動かし、手を動かし、ひとつの人形を造形をしていく様子がカッコイイと思ったのを、今でもハッキリと覚えています。
その後、猪瀬氏のXをフォローし、スペースを開いて話している時に、震える指と喉に気合いを入れてスピーカー申請をし、何度か会話もさせて頂きました。
2024年の2月末。都内で行われた展示会『響き煌めく境界線』にて会場でお会いすることができ、直接お話しすることもできました。(上記の展示会については、カクヨム掲載の『『響き煌めく境界線』を訪ねて』にも詳しく掲載しております。よろしければ是非)。
『響き煌めく境界線』終了からしばらく後、猪瀬氏にオンラインで取材をさせて頂き、日々の制作のことや、YouTubeで発信することとなった経緯などをお聞きし、それらを元にアレンジを加えて、本作が完成いたしました。
今だから言いますが、当初はファンタジーのお話を書くつもりでした。しかし、なかなか納得したものにならない。セルフ没を何度も下しました。ついでに、書けなさすぎて「もう無理ー!書けないー!やだー!」と、『ダンジョン飯』のマルシルみたいになってました。
書き上げることができて、本当に良かったと思います。完成したときの達成感たるや、まさに「脳汁が出る」という感じでした……。
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【作品解説的なもの】
さて、野暮かなと思いつつ、ここからは作品の解説と言いますか、各エピソードの意味と言いますか、そういったものをつらつらと書いていこうと思います。よろしければ、お付き合いください。
〇作品タイトル『ピグマリオンの祈り』
「ピグマリオン」というのは、ギリシア神話に登場する人物の名前です。彼は現実の女性に失望し、自分の手で理想とする女性の彫刻を作ります。次第に、その彫刻に本気で恋をし、最終的にアフロディテが命を吹き込んだことで彫刻の女性は人間となり、ピグマリオンは彼女を妻に迎える。以上が、ギリシア神話でのざっくりとしたあらすじになります。
自分の理想とする姿を粘土を使って造形する海理の姿を、このピグマリオンに準えて、このタイトルとしました。
余談ですが、このタイトル、実は完成の直前に決まったもので、それまではずっと正式なタイトルを付けていませんでした。原稿を保存しているファイルには、ずっと『DOLL(仮)』というファイル名が付いていました。
〇各話サブタイトルの由来など
・第一話「不調律のカリヨン」
カリヨンというのは、教会などに設置されている巨大な鍵盤楽器で、「音程のある鐘」を鳴らす楽器です。
人形そのものと直接の関係はありませんが、構造としては12世紀~19世紀にかけてヨーロッパで流行した自動人形(オートマタ)にも見られる「からくり仕掛け」のようなものが存在します。この自動人形の中でも、教会で鐘を鳴らす「鐘突き男」というものが存在します。
学生生活と作家活動、そのバランスを崩した海理の姿を、調律の崩れたカリヨンに喩えてサブタイトルに採用しました。
・第二話「霧の中のコッペリア」
こちらは、動く人形を題材としたバレエ作品で『コッペリア』というものがあり、そこから借用しました。
・第三話「リアル」
そのまんま「クリエイターにとっての厳しい現実」です。
・第四話「アリアドネの糸」
ギリシア神話からの引用です。迷宮ラビュリントスに入るテセウスという男性に、迷宮から脱出するために糸玉を渡す女性がアリアドネです。
この神話に由来して「難問から脱出する糸口」の慣用表現として、「アリアドネの糸」という言葉が生まれました。日本の小説だと芥川龍之介『蜘蛛の糸』なんかもありますね(まぁ、『蜘蛛の糸』では最終的に糸がぷつりと切れてしまいますが……)。
海理の友人として登場する上田の発言によって、海理が突破口を見出す様子を、この慣用表現としてサブタイトルに採用しました。
・第五話「回る歯車」
こちらは、上記でも登場した自動人形にも組み込まれている歯車から由来しています。海理の活動が少しずつ前進していくことを表現したくて、このタイトルにしました。
・第六話「歩き出すマギ」
こちらはキリスト教のエピソードがモチーフとなっています。
イエス・キリストが生まれた時、「ベツレヘムの星」と呼ばれる輝く星が見えたとされており、三人の賢者=マギにキリストの誕生を知らせた、という伝承があります。展示会に向けて活動を始める海理、阿部、飯田の三人を、このマギに準えてこのタイトルとしました。
余談ですが、クリスマスツリーのてっぺんに飾られている星は、このベツレヘムの星をモチーフとされているます。有名だから知っている人も多いかな……。
第七話、第八話に関しては、ぶっちゃけそのまんまなタイトルなので割愛。唯一、私のコダワリがあるとすれば、最終話のサブタイトルを、メインタイトルと同じにすることでした。えぇ、こういうの、大好きなんですよ。
クリストファー・ノーランの映画『ダークナイト』や、アニメ『送葬のフリーレン』の第八話みたいな、タイトルを回収する演出が大好物なんです。作者、ああいうの見ると興奮しちゃうんです。はい。
〇主人公の名前
伏野 海理(ふせの かいり)という本作の主人公の名前。「ふせの」という苗字自体は実在するのですが、どうやら日本では少数らしいです。また、同じ漢字で「ふしの」と読むパターンもありました。
「海理」というファーストネームも、名前の響き的にはありそうですが、中性的な名前になったかな、と思っています。スクエニのゲーム『キングダム・ハーツ』のヒロインの名前も「カイリ」だったし、男性名にするなら「カイト(海斗、開斗、界人、etc...)」の方が一般的な気がします。
が、一応これ、ちゃんと理由があります。作者なりのコダワリというか、遊び心のひとつです。
思い出してください。本作のモデルとなった方の名前を。
猪瀬暖基(いのせはるき)氏です。
アルファベット表記で「INOSE HARUKI」。
これを並べ替えるとアラ不思議。
「HUSENO KAIRI」になります。
いえす、アナグラムなんです(正しい表記にするなら「FUSENO KAIRI」になりますが、そこはまぁ、目をつむっていただけると……)。
えぇ、作者こういうのも大好きなんですよ。並べ替えて意味が変わったり、暗号にしたりするのも大好物。
『ダ・ヴィンチ・コード』? えぇ、大好物ですとも。
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さて、さくっと終わらせるつもりが、思ったより長くなってしまいました。また何かしらの作品でお会いできると、この作者はキリモミ回転して喜びます。
最後に、せっかく作った告知用の画像も載せておきます。
お読みくださり、本当にありがとうございました。
2025年5月21日(水) 藤野悠人