腕っぷしが強いヤンキー少女と、歳下の豪族のお坊ちゃま。
そんな二人がどう結ばれるのか…。
前半コメディ要素も加えて進む物語は、ちゃんと恋愛ものとして心地よく終わります。
物語として、とても面白い!
しかし、この物語の良さはそこだけではありません。
現代と違って、自分の思うように生き方を選べなかった奈良時代。
それでも主人公達は、敷かれたレールの上を仕方なく歩くのではなく、それを自分の人生として顔を上げて力強く生きるのです。
その潔さと清々しさといったら、眩しい程。
真っ直ぐに向け合う愛情も然りです。
そして、作者様のシリーズに共通する親子の愛情や絆が素晴らしいのです。
人間はこうして繋がっていくのだと改めて感じ、作者様が数多く紡がれている、先に繋がっていく子や孫達の物語までも、きっと読みたくなりますよ。
おすすめです!
品ある金地に龍紋様、歴史ある看板(なんせこの御作設定は奈良時代)を掲げた屋台を祭りで目にした。そこで何気なく食った串焼き。
うっ! こいつはウマい!!
出会い頭に拳骨喰らった気分だ。
ハツラツとして肉汁ジューシー、ピリ辛ダレ。コレは白き茶碗の炭水化物が欲しくなる。
そこへ店主から勧め差し出されるは、ふっくらもっちり白き湯気を上げたまんとうのようなもの。
なるほど…肉を挟んで、「甘いタレ」をかけてか。先の想像とは違うが大いに魅力的だ。では早速。
こ、コレは! なんとまあ……素晴らしきマッチング!!
もう、こうなるとガツガツ食うのが止まらない。頬張り胸が苦しくなるのを見計らって、店主が差し出したるは。
杯に並々と注がれし芳醇な香りを放つ飲み物。
おりしも宵の訪れで、澄んだそれに満月が映り込む。
ほう……なんとも風雅な。
満月をたたえる煌めくそれを飲み干すと、自身も月が満ちるように。心がほうっと、ふくよかになる。
心地よい酔いで立ち去る直前、店主が本店の名刺を差し出した。
はは、良いね、店主! 気に入った! 今度は仲間を誘って本店へまた来らぁ!
グルメとは全く無関係な御作に、このレビュー?!でもこの御作お読みになったら、きっと共感してもらえると思うの。ぜひともお立ち寄りください。
物語を書く時にキャラが大事だと、僕は別のレビューで書きました。その先についても少し触れてしまいたくなる程、今回もこちらの筆者様は圧倒的に優れた筆力を存分にふるっておられます。そして期待にたがわず、さらに上を行く面白さでした。
僕はつい、小説技法の種明かしをどんどんしたくなります(笑)。
それは何かと言えば、キャラ造詣においての「矛盾点」の解消につながります。
どういう事かと言うと、個性を立てる事でキャラは読者様に認識されます。10点満点中で言えば、これで1点。必死で考えた個性キャラも生み出すだけでは1点です。さらにその個性が魅力的である事でやっと2点に達します。案外低いです。
厳しいですが下読みさんだったらわかるかな? では何が必要かと言えば一般に言われているのは「共感性」です。これを足す事でやっと4点になります。さて、ここから加点してゆく上で問題が生じます。
「個性的なキャラなのに、そんな普通の考え方するの?」
こういう「矛盾」が必ず発生します。つまりキャラ作りをしている事が、言葉は悪いですが読者様にばれるわけです。メジャー系の物語でも厳しい見方をした時に、「あれっ?」と感じる事がしばしばあります。
ではこの矛盾点を解消する方法とは何でしょう?
その答えがこの物語ではしっかりと描かれています。
それが何かは言いません。僕の感じるポイントを書いてしまうと、皆様の感性や表現力を阻害する可能性があるからです、すいません。そしてこの物語、いやそれだけでなくこちらの筆者様の桁違いの才能は、他の物語でもとても勉強になると僕は思っています。
強くお勧め致します。
ですが、最後に注意点。皆様、学ぶためではなく純粋に物語を楽しんで下さい。その後に残るものが学びです。このレビューを誤読し、本来受け取れるはずの素晴らしい読後感を見失う様な間違った読み方は、決してしないで下さいね。
とっても素敵な物語、是非宜しくお願い致します( ;∀;)