恋が時代を変える、そのために必要な圧巻の第一章。

剋帝姫舜には秘めたる禍がある。彼の妻たちが暮らす後宮にも――。
蔓延った禍に吸い寄せられたおぞましい蟲たちによって、舜には妻の顔が見えない。妻だけでなく部下や信頼のおける侍医すらも。それは舜を孤独に追いやるには十分な怪異だった。
満身創痍の舜の元を訪れたのは禍祓いの一族である姚流麗。男装じみた服装やすらりとした体躯、そして特徴的な白い仮面。その下に隠された美貌と敬意を超えた献身に、舜はみるみるうちに惹き込まれていく。
やがて後宮の姫たちを差し置いて舜の褥に呼ばれる流麗は皇帝を唆した毒婦と呼ばれるようになるのだが、真実は二人しか知るところではない。この物語は、愛の毒に魅了された二人の邂逅を綴る序章である。


中華×後宮×ファンタジー×ミステリー。界隈の読者が好きな要素を全部盛り込みましたと言わんばかりの豪勢な御膳。しかもどれをとっても口当たりが良い!
中華に関しては作者様お得意の世界観で、ネーミングから設定に至るすべてに全幅の信頼を寄せて拝読させていただきました。後宮は、ヒロインである流麗が後宮に入って成り上がっていくのではなく、後宮の外から攻略していく展開が真新しくて良いなと思いました。ファンタジーについては、今作で欠かせないのが蟲でしょう。読んでいてゾッとしました。それと同時に読者に「早く流麗に祓ってほしい」と思わせる手腕。お見事です。ミステリーについては、ぜひ読み進めていただきたい。なぜ後宮に蟲が沸くようになったのか、この謎を流麗と共に追っていくうちに、物語へ引きずり込まれます。

そして今作は「世界を変える運命の恋」中編コンテスト参加作品。二人が変えていく未来の国の姿もそうですが、舜と出会って変わった流麗の世界の鮮やかさも必見だと思います。自分の中にある邪悪なものが全部浄化されました。私の語彙がなくてこの衝撃を伝えきれないのが悔しい……!ぜひ最後まで読み進めていただきたいです。

しいて言うなら、文字数制限が憎い。後宮の姫君たちの流麗に対するやっかみを読んでみたいし、恋を知って浮足立つ舜と流麗の描写をもっと摂取したいと思ってしまいました。ぜひ書籍化の上で長編化をお願いしたい所存!皆様もぜひご一読ください!

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